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2007.09.09 (Sun)

揺るがない視線  Chapter1 

                                       『天元突破グレンラガン』


 アークグレンから、最後の避難民が降りていく。
 夫婦だろうか、自分より少し年上にみえる若いふたりが笑顔でゲートをくぐっていくその姿を、シモンはグレンラガンに寄り掛かかって眺めていた。
 上部議事堂への破壊に比べれば、無傷とも言えるだだっ広い地下格納ポート。アークグレンはすでに船形に戻っている。
 グレンラガンやガンメンを格納庫に収納してから結構時間がたっていたが、まだここにいるのは避難民がカミナシティに戻っていくのを見ていたいと思ったからだ。グレン団が駆け付けなければ、最後の人類になっていたかもしれない人々。
 グラパールは正規の格納庫に入り、ギミーもダリーもここにはいない。ここにあるのは旧ガンメンと呼ばれていた機体、ここにいるのは政府の要人ではなく、ただのガンメン乗りたちだ。
 アークグレンが避難民の誘導を初めてから動かなくなかったシモンを置いてどこかへ行こうという者はなく、結局の所、皆シモンのまわりで思い思いに過ごすことになった。
 ただマッケンとレイテの二人だけは、彼らの頭上で政府の整備班にせっせと指示を送って整備に忙しかった。グラパールの解析元機とはいえ、現在の整備班主力はガンメンを知らない。勢いその指示は慌ただしく、荒っぽくなる。
 その張り上げる声が響く中、シモンがグレンラガンから背を離した。
 所在なげな皆の目が、そのシモンの目線の先を追う。アークグレンから、遠目にも白い制服を着た人物が降りてきた。
 ロシウだった。
 他に二人連れている。あれはキノンと……シモンが名前を知らない、キノコ頭の若い技術官だ。アークグレンから降りきって、そしてロシウがシモンたちに気付く。少しも迷う素振りを見せなかった。
 二人に何かを話して、そして自分はひとりで真っ直ぐに近付いてくる。こんなに離れているのに、シモンはロシウが一心に自分を見つめていることがわかった。揺るがない視線に、こちらも目をそらすことが出来ない。
 だから。
 ロシウ、とシモンは大きな声で名前を呼んだ。自分の目の前にたどり着く前に。大きく手を振ると、自然頬がゆるんで笑顔になった。
「おまえ、ひっどい顔してるなあ」
 実際、近付いてきたロシウの目の下にはくっきりとした隈が出来ている。モニター越しに見た時にはわからなかったが、頬骨が少しわかるくらいにこけている。もともと肉付きの薄い男だが、この前に顔を合わせた時はこんなではなかった。
 この前、裁判の時には。
「シモン……さん。僕は」
 ロシウはシモンから目を逸らさなかった。まるでそこにはシモンしかいないように。
「僕はこのまま執務室に戻ります。すべての手続をこなし次第、あなたに総司令の権限を戻しますので、」
「うん、いいよ」
 シモンは即答して、続けて何か言おうとしたロシウを口ごもらせる。
「これからやることが山積みになるんだろ? 今度は文句言わないでサインするから」
 こちらこそさ、とシモンはロシウの肩を叩いた。
「よろしくな、ロシウ」
 満面の笑顔が戻ってくるとは、シモンも思っていなかった。だから少しの絶句の後、ほんの少しだけでもロシウの口元がゆるんだのが意外だった。
「わかりました。配慮します」
 ロシウは軽く、頭を下げた。
 なんだかそれで、シモンはかけるそれ以上の言葉を失ったような気がした。なんだかそれからは曖昧で、去っていくロシウを呼び止める言葉も、追いかける言葉も見つからない。
「……相変わらずねえ、あの子」
 ロシウがゲートで待っていた二人に合流して去っていく、それを見送る背後から呆れたような声が聞こえた。
 ヨーコだ。ライフルを背負っていない彼女は、手持ちぶさたなのか、さっきから小さな端末を開いたり閉じたりを繰り返している。
「私がいない間もあんな感じだったの?」
「そうなんだよな」とゾーシィの声もする。「いつだってあんな感じでよ。がみがみ言ってばっかりで、なあ?」
「「いつも怒鳴ってばかりで、会議も進まない」」
 同意したのはジョーガンとバリンボーの双子。皆、それまで黙っていたのが嘘のように口々に言い立て始めた。
「いつだって権限がどう、調査がどうってな」
「「そうそう」」
「会議に出席するのが嫌になってくるってえの。で、その挙げ句がこれだろ? 一番大事な時に、」
「……うるせえぞ、お前ら」
 ぴたり、と3人の口が閉じる。ぎりっと音が出そうなほど、睨み付けているのはキタンだ。
「がたがた言ってんじゃねえよ。一番大事な時に、だと。おい、ゾーシィ? 一番大事な時にロシウが何したって言うんだよ。言って見ろ」
「な、なんだよキタン。何怒ってんだよ」
「うるせえって言うんだよ。月が衝突したらどうなるか、お前たちわかってたか? わかってたのはロシウだ、お前たちじゃねえ。ちょっと俺たちとはやり方が違っていただけで、あいつはあいつで根性決めたんだ。
助けられる人間だけでも助けよう、そのために何もかも背負うつもりで、あいつは決めたんだ。いままで真面目に話も聞かなかったお前たちが言うのは、俺が許さねえ」
「なんだよ、会議出るのお前だって嫌がってたじゃねえか」
 至極真っ当な指摘。 「そ、それは」 と少し揺らいだキタンを救ったのは頭上からの笑い声だった。
 ワイヤーの下がる音がして、頭上のガンメンを整備していたマッケンが降りてくる。
「キタンの言うとおりだな。……シモン、グラパールが公式配備されて、ガンメンを完全破棄することになったのはいつだったか、覚えているか?」
「そうだな……」
 シモンは記憶をたぐる。確かロシウとかなりもめた覚えがあったが、驚いたことにその時期となると咄嗟に思い出せなかった。
 グレンラガンの保存も、ガンメンの破棄も、会議に議題として提出された時にはすっかりお膳立てが終わっていた。その場の誰もが強く反対したのは当然だった。自分の搭乗機を破棄します、と言われて諸手を挙げて賛成する訳がない。
 それはロシウも充分承知の上だったから、ほぼ完璧な理論武装をしていた。
 いわくこれからの政府は一騎当千の戦力ではなく、統一指揮系統の元に動く軍事組織を必要とすること。
 ガンメンが乗り手のメンタル面に依存しきっている不安定な攻撃機であること。
 戦う相手もいないのに“強力な兵器”を保持することへの市民の反感と、不安。
 そのうえ機体保持の経費やらなにやら持ち出されて頭は飽和するし、結局は押し負けた覚えがある。
 けれどそんなに昔、という訳でもない。確か薄寒い季節で「2年前の冬、だったかな?」
 やれやれ、とマッケンはため息をつく。
「3年前の春だ。俺は良く覚えてるよ。
あの時期はうちの工場もなかなか厳しい時期でな。同業者が増えて、しかも派手な営業を繰り返されりゃあ客はどうしたってそっちを向く。俺もレイテも機械はいじれても営業となるとお手上げだ。しかも二人目の子供が産まれるってんで何かともの入りで……って、そんなのはいいか。
まあ、そんな時期に政府の役人がガンメンを破棄しろって持ってきた」
「破棄しろ、だろ? それを命じたのはロシウじゃねえか。お前らがこっそりメンテしてくれたお陰で」
「焦るなよ、ゾーシィ。お前らは知らないだろうが、ガンメンの破棄は入札だったんだよ」
「馬鹿にすんなっ。入札ってえのは、えーと、あれだ札を入れ」
「一番安い値段で請け負う所に仕事が回るってことだよ、覚えとけ。でな、うちは参加してないんだよ、その入札」
「は?」
「俺たちはガンメン破棄には反対だったからな。そんなのに登録する訳がねえ。なのにうちが落札した。変じゃねえか」
「何が言いたいんだよ。はっきり言えって」
「鈍いねえ、お前ら」とマッケンは笑う。
「俺とレイテがガンメンを壊せる訳がねえ、それをロシウが考えなかったと思うのか? あの、ロシウだぞ?」
 ぽかん、と双子の口が開く。
「ガンメンの破棄を決めたのは確かにあいつかも知れない。役人が持ってた補佐官直々の命令書に、あの几帳面な字で署名もしてあったしな。で、俺たちはあいつ直接にガンメンを破棄したって書面を送ってやった。
それっきりだ。
政府の役人が確かに壊したかどうか、確認しに来ることもなかったし、グラパールが量産されるようになると、その最先端の部品注文も舞い込むようになった。それを流用するなんて簡単だ。……なあ、シモン? グレンラガンだって同じだろ? ロシウはグレンラガンも破棄するって言って、結局どうしたよ?」
 結果を、改めて言うまでもなかった。皆知っている。知っているからこそ、シモンがロシウにどう言うのか、その 『儀式』 を見守るためにここに残った。
「そうだな。……本当に、そうだ」
 言いながら、シモンはゲートを見つめている。ヨーコがまた、ぱたりと端末を閉じた。





「揺るがない視線」 Chapter2 へ続く
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2007.09.09 (Sun)

揺るがない視線  Chapter2 

                                       『天元突破グレンラガン』

テーマ : 二次創作 - ジャンル : 小説・文学

【編集】 |  23:00 |  Novels  | Top↑
2007.09.09 (Sun)

揺るがない視線  Chapter3 

                                       『天元突破グレンラガン』

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【編集】 |  23:06 |  Novels  | Top↑
2007.09.09 (Sun)

揺るがない視線  Chapter4 

                                       『天元突破グレンラガン』

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2007.09.09 (Sun)

揺るがない視線  Chapter5 

                                       『天元突破グレンラガン』

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2007.09.16 (Sun)

あの空の向こう側  Chapter1 

                                       『天元突破グレンラガン』



「ロシウ~」
 どさりと肩から背中に重みがかかる。
「もう帰んのかよ~。もうちょっと飲んでけよ~」
 そっと抜け出そうとしたのに、やっぱり失敗した。明日の宇宙への旅立ち、見送る側だとてそれなりに準備というものがある。
 奇跡的に破壊をまぬがれた総司令執務室。壮行を兼ねたただの宴会も盛りを過ぎて、もう残っているのは古くからのグレン団ぐらいなものだ。それも盛り上がった輪も少しずつ抜けた頃合。残っているのは独身男ばっかりだ。
 たぶんこれは体重全部掛けられているな。
 耳の後ろで 「飲もう飲もう」 と繰り返すシモンに、内心ロシウは軽くため息をついた。
 いくら自分の方が背が高くても、こうして抱きつかれると本当に疲れる。かといって強引に突破しようとすれば、もとより自分で立とうという気のないシモンはかえって面白がってひっついて、結局引きずり倒されることになる。動かないでじっとしているのは経験上の知恵というものだ。
「重いですから離してくださいよ」
 しかたなしにロシウは両肩から投げ出されたシモンの腕を軽く叩く。振り返った肩ごしに、案の定、とろんとした目とかち合った。
「え~。帰んのかよ、ひで~」吐く息が酒臭いのはお互い様だ。「飲もうよ、まだ飲みたりないよ~。今日くらい最後までいろよ~」
「あなたに付き合ってたら朝までかかります。起きられないと困りますから」
「うっそつけ~。どーせ早起きするくせに」
 ぎゅっと回った腕が強くなって 「ちょっ、苦しいっ。シモンさんっ」
「こぉら、シモン。絡んでんな~」
「キタンさん!」「キタン~。ロシウが帰るってゆーんだよ~」
 やっとのことで解放されて。背中にひっぱられた高襟を戻しながら見れば、キタンが座り込みそうになっているシモンを片手でひっぱりあげているところだった。
「帰るのか、ロシウ?」
「と思ったのですが捕まりました」
「え~、飲もうよ~。キタン~」
「あー、わかったからっ。こら抱きつくなっ、暑苦しい」
 よろけてそのまま抱きつくシモンを抱え直し、キタンは声を出さずに「行け」と笑ってくれた。
 昔からシモンは酔うのが誰よりも早い。だらだら呑み続けても平気だし、その割には翌朝すっきりした顔をして出てくるからたちが悪い。ロシウはどちらかといえばあまり酔えない口なので、こういう時はいつも唯一シモンに付き合えるキタンに助けてもらっていた。
 なんだかそれが懐かしい気もしつつ、ロシウも笑い返して軽く目線で礼をする。そう、本当に久しぶりだ。こんなふうにただ飲み明かす夜なんて。
「おっし、飲み直すぞ、シモン!」
「飲み直すぞ、キタン!」
 やれやれと見送ってきびすを返そうという先、あがった声にロシウは振り返る。肩を組む二人の向こうで、慌てたようにダリーが立ち上がる所だった。
「ロシウ! 帰るの?」
「帰るんだってさ~」
 まだ不満気味なシモンの声を聞きつつ、ダリーはまだ隣で何か頬張っているギミーの背中を叩く。
「あたしも帰るっ、ギミー行こう」
 うん、とギミーまでもが立ち上がったのに、シモンは「おまえ達もか」と悲痛に叫んで、今度は席を立ちかけたギミーに抱きつこうとしてアイラックとキッドに支えられるように止められる。
「帰るって子は帰してあげなさいよ」
「子供は早く寝ろよ」
「これからは大人の時間だな」
「歯磨けよ」「風呂入れよ」
 シモンをするっとかわして「うるさいよ皆っ」とギミーもじゃあねと、ダリーを促して輪を抜けた。
「ロシウ、これから家、帰るんでしょ?」
「そのつもりだけど」
 まだ少し、双子の背はロシウに届かない。こうして二人そろった穏やかな顔を見下ろすのも、また久しぶりな気がする。この間は、とロシウは少し情けない思いで苦笑する。ずいぶんひどい顔をさせてしまった。
「じゃあさ」と、双子は笑顔を見合わせる。「俺たち今日、家に帰ってもいい? いいよね?」
 途端、頬がゆるみそうになって……慌てて引き締める。
「帰るって……グラパール隊は待機命令が出ているじゃないか」
 言いながら、ロシウは自分で自分にため息を付きたくなる。我ながら面倒な性格だ。がっかりさせたくないのに、咄嗟に口を出るのがこの台詞。
 けれどダリーもギミーも、また顔を見合わせて笑う。
「平気なの。ほら、待機命令、許可があればって」
 きゅっと、二人は腕を取ってくる。自然にロシウは二人の手をそのまま握った。昔よりも大きなはずなのに、するりと手の中に収まった。
「総司令ー!」ギミーがあいた方の手を頬にあてて宴席に叫ぶ。
「おーう!」
 仁王立ちのシモンが両腕を組んで回転するように振り返る。
「俺とダリー、外泊してもいいですかー!」
「ゆるーす!!」
 どっと笑い声が上がる。
 言った拍子、ばっと両手を挙げたシモンがとうとうひっくり返ったのだ。




                              「あの空の向こう側」 Chapter2 へ続く



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【編集】 |  06:50 |  Novels  | Top↑
2007.09.16 (Sun)

あの空の向こう側  Chapter2 

                                       『天元突破グレンラガン』

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【編集】 |  07:02 |  Novels  | Top↑
2007.09.16 (Sun)

あの空の向こう側  Chapter3 

                               『天元突破グレンラガン』

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【編集】 |  07:11 |  Novels  | Top↑
2007.09.16 (Sun)

あの空の向こう側  Chapter4 

                                       『天元突破グレンラガン』

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【編集】 |  07:13 |  Novels  | Top↑
2007.09.24 (Mon)

壊れゆく楽園の砂時計 

                                       『天元突破グレンラガン』

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