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2007.09.16 (Sun)

あの空の向こう側  Chapter1 

                                       『天元突破グレンラガン』



「ロシウ~」
 どさりと肩から背中に重みがかかる。
「もう帰んのかよ~。もうちょっと飲んでけよ~」
 そっと抜け出そうとしたのに、やっぱり失敗した。明日の宇宙への旅立ち、見送る側だとてそれなりに準備というものがある。
 奇跡的に破壊をまぬがれた総司令執務室。壮行を兼ねたただの宴会も盛りを過ぎて、もう残っているのは古くからのグレン団ぐらいなものだ。それも盛り上がった輪も少しずつ抜けた頃合。残っているのは独身男ばっかりだ。
 たぶんこれは体重全部掛けられているな。
 耳の後ろで 「飲もう飲もう」 と繰り返すシモンに、内心ロシウは軽くため息をついた。
 いくら自分の方が背が高くても、こうして抱きつかれると本当に疲れる。かといって強引に突破しようとすれば、もとより自分で立とうという気のないシモンはかえって面白がってひっついて、結局引きずり倒されることになる。動かないでじっとしているのは経験上の知恵というものだ。
「重いですから離してくださいよ」
 しかたなしにロシウは両肩から投げ出されたシモンの腕を軽く叩く。振り返った肩ごしに、案の定、とろんとした目とかち合った。
「え~。帰んのかよ、ひで~」吐く息が酒臭いのはお互い様だ。「飲もうよ、まだ飲みたりないよ~。今日くらい最後までいろよ~」
「あなたに付き合ってたら朝までかかります。起きられないと困りますから」
「うっそつけ~。どーせ早起きするくせに」
 ぎゅっと回った腕が強くなって 「ちょっ、苦しいっ。シモンさんっ」
「こぉら、シモン。絡んでんな~」
「キタンさん!」「キタン~。ロシウが帰るってゆーんだよ~」
 やっとのことで解放されて。背中にひっぱられた高襟を戻しながら見れば、キタンが座り込みそうになっているシモンを片手でひっぱりあげているところだった。
「帰るのか、ロシウ?」
「と思ったのですが捕まりました」
「え~、飲もうよ~。キタン~」
「あー、わかったからっ。こら抱きつくなっ、暑苦しい」
 よろけてそのまま抱きつくシモンを抱え直し、キタンは声を出さずに「行け」と笑ってくれた。
 昔からシモンは酔うのが誰よりも早い。だらだら呑み続けても平気だし、その割には翌朝すっきりした顔をして出てくるからたちが悪い。ロシウはどちらかといえばあまり酔えない口なので、こういう時はいつも唯一シモンに付き合えるキタンに助けてもらっていた。
 なんだかそれが懐かしい気もしつつ、ロシウも笑い返して軽く目線で礼をする。そう、本当に久しぶりだ。こんなふうにただ飲み明かす夜なんて。
「おっし、飲み直すぞ、シモン!」
「飲み直すぞ、キタン!」
 やれやれと見送ってきびすを返そうという先、あがった声にロシウは振り返る。肩を組む二人の向こうで、慌てたようにダリーが立ち上がる所だった。
「ロシウ! 帰るの?」
「帰るんだってさ~」
 まだ不満気味なシモンの声を聞きつつ、ダリーはまだ隣で何か頬張っているギミーの背中を叩く。
「あたしも帰るっ、ギミー行こう」
 うん、とギミーまでもが立ち上がったのに、シモンは「おまえ達もか」と悲痛に叫んで、今度は席を立ちかけたギミーに抱きつこうとしてアイラックとキッドに支えられるように止められる。
「帰るって子は帰してあげなさいよ」
「子供は早く寝ろよ」
「これからは大人の時間だな」
「歯磨けよ」「風呂入れよ」
 シモンをするっとかわして「うるさいよ皆っ」とギミーもじゃあねと、ダリーを促して輪を抜けた。
「ロシウ、これから家、帰るんでしょ?」
「そのつもりだけど」
 まだ少し、双子の背はロシウに届かない。こうして二人そろった穏やかな顔を見下ろすのも、また久しぶりな気がする。この間は、とロシウは少し情けない思いで苦笑する。ずいぶんひどい顔をさせてしまった。
「じゃあさ」と、双子は笑顔を見合わせる。「俺たち今日、家に帰ってもいい? いいよね?」
 途端、頬がゆるみそうになって……慌てて引き締める。
「帰るって……グラパール隊は待機命令が出ているじゃないか」
 言いながら、ロシウは自分で自分にため息を付きたくなる。我ながら面倒な性格だ。がっかりさせたくないのに、咄嗟に口を出るのがこの台詞。
 けれどダリーもギミーも、また顔を見合わせて笑う。
「平気なの。ほら、待機命令、許可があればって」
 きゅっと、二人は腕を取ってくる。自然にロシウは二人の手をそのまま握った。昔よりも大きなはずなのに、するりと手の中に収まった。
「総司令ー!」ギミーがあいた方の手を頬にあてて宴席に叫ぶ。
「おーう!」
 仁王立ちのシモンが両腕を組んで回転するように振り返る。
「俺とダリー、外泊してもいいですかー!」
「ゆるーす!!」
 どっと笑い声が上がる。
 言った拍子、ばっと両手を挙げたシモンがとうとうひっくり返ったのだ。




                              「あの空の向こう側」 Chapter2 へ続く



テーマ : 二次創作 - ジャンル : 小説・文学

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