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2008.01.13 (Sun)

君の瞳にうつるもの Scene1 

                                       『天元突破グレンラガン』



【More・・・】



「あ」
 メニューを見ようとうつむいたテーブルの上に影が差しました。
 ふと見上げた窓越しに、太陽を遮って何かがビルの谷間を飛びさって行くのが見えた気がします。グレンラガンの足みたいのが。
「ニア? どうしたの?」
 並んで席に座って、同じようにメニューを覗きこんでいたキヤルが顔を上げました。
「早く注文決めちゃいなよ」
 あれ、と私は空を指さしました。
「シモンが帰って来たみたいなの」
「シモン? ああ、意外と早かったなあ、帰ってくるの」
 言いながら、キヤルは何かに気付いたように腰を浮かせます。
「お姉ちゃん! こっちだよ!」
 見れば、ショップの袋を持ったキヨウさんが人捜し顔で入り口に立っていました。ぱっと笑顔になってやって来ます。
「もう、すごい混んでいて参っちゃうわよ」
 4人がけのテーブル。ショッピングバックでいっぱいになった椅子の上に、キヨウさんは荷物をそっと置きました。
「何、また買っちゃったの? キノンに電話かけに行ったんじゃなかったのかよ?」
「かけに行ったのよ。でもその電話の脇にかわいいタオルの専門店があって。ダリーにあげたら喜ぶかなあって」
 キヤルはにやりと笑う。「買っちゃったんだ」
「買っちゃった」キヨウさんもにこりと笑う。「本当、可愛いのよ。ほら、いつも抱っこしてるぬいぐるみ。あの刺繍がしてあってね」
 お客さま、ご注文はお決まりでしょうか?とウェイトレスさんが声をかけてくるのに、キヨウさんは口をつぐみました。さっとメニューを目が走ります。
「シブーストと、ダージリンのストレートをお願い」
「オレ、プリン・ア・ラ・モード。ニアは?」
 そういえば、まだ決めていませんでした。
「すいません。まだです」
 ウェイトレスさんはメニューパッドを持って、注文待ちです。でも、どうしよう。
「あの、あとでお呼びします」
 かしこまりました、とウェイトレスさんは一礼して去っていきます。白い制服の裾がきれいに翻ります。
「ゆっくり選びなよ」キヤルはメニューを押しやってくれました。「お姉ちゃんのおごりだもん」
 メニューは綺麗に印刷されたデザートの写真でいっぱいです。でも、……でも、本当にどうしましょう。帰りたくなって来たの。
「どうしたの? なんだか落ち着かない顔をしてるみたい」
 キヨウさんが首をかしげて、キヤルがへにょっとした顔をしました。
「もしかしてニア、帰りたくなったとか?」
 キヤルに言われて、私は頷きます。なんとなくぱたんとメニューを閉じて。
「さっき、シモンが帰ってきたみたいなの。グレンラガンを見たような気がして」
 もう一度、繰り返すと「そう」とキヨウさんは言って、メニューをすっと指で開きました。
「とりあえず注文、決めてしまえば? 休憩して帰るくらいはいいでしょう?」
 なんだかそわそわします。
 どれにしよう、どれもおいしそう。空を見上げるまでは、私もそう思っていたのに。なのに今はそこに写っているデザートは、ただの写真です。ちっともおいしそうに見えない。
 キヨウさんが笑います。
「もう、そんな気分じゃ、なさそうね」
「だって、……シモンを置いてきているんですもの」
 今日は本当は、シモンの休日でした。
 だから一緒に買い物に行く約束をしていたのです。何を買うかは決めていなかったけれど、新しくできたショッピングモールに行ってみようって。
 でも待ち合わせの時間に総司令執務室に行くと、シモンはいませんでした。グレンラガンも格納庫になくて、リーロンさんに仕事に行ったって聞かされました。
「思ったより、帰ってくるの早かったわね」
 キヨウさんもちらりと空を見上げて、キヤルと同じことを言います。ええ、と今度は私も頷きました。
「もう少し待っていれば良かったかなって」
「もう少しってニア、2時間も? 待ちすぎだぜ、それ」
 そうでしょうか?「だって、きっとシモンは急いで帰ってきてくれたと思うんです」
「まあ、そうでしょうねえ」キヨウさんは頬杖をつきます。「あの子のことだから、ニアが待っててくれるって思って、急ぐでしょうね」
「なのに私は出てきてしまったので」
 メニューを指でこするとつるつるします。
「たぶんシモン、がっかりしてるんじゃないかしら」
「いいんじゃないの、たまには? だって、いつもいつも待っててあげるばっかりなんでしょう?」
「そうですけど……。シモンはいつも忙しいんですもの。しかたないわ」
 うん、しかたないの。
 今、シモンはこの国で一番偉い役職についてます。総司令官。一番偉い、というのは一番忙しいということでもあるんです。
「ニアはさ」
 キヤルはテーブルの上に片手だけ突っ伏しました。すぐに行儀が悪い、ってキヨウさんに手を叩かれましたけど。
「オレたちが買い物に誘いに行かなかったらずっと待ってたでしょ、シモンのこと?」
 渋々身体を起こしたキヤルに、どうかしら?と私は首をかしげます。
「待っていたかもしれないけど、でも、待たなかったかもしれないわ」
 ふーん、と今度はキヤルが首をかしげます。「どういう意味さ、それ?」
「だって仕事に行ってしまったら何時に帰ってくるのか、わからないもの。私だって、そんなに長く待ってはいないわ」
 そう言いながら、本当はわかりません。
 シモンもロシウもいないから、執務室には誰も来ません。ただ、青空を見上げて私は待ってるだけ。仕方ないことだってわかっていたけれど、少し寂しいなって思ってもいたの。
 前みたいに一緒に戦いに行くことはないから。そうする必要もないよ、ってシモンは言ってくれるから。私は待ってる他はなくなるの。
「へえ」キヤルは意外そうな声を出します。「ニアのことだから、いつまでも待ってるって言うのかな、って思ってた」
「あら、どうして?」
「だっていつも仲いいもん。いつ見ても一緒にいるし」
「一緒にいるわよ? シモンがお仕事終わった後とか。でも、お仕事中は邪魔できないし」
 そりゃそうか、とキヤルは笑いました。
「四六時中一緒なわけないよな」
「そうよ。学校だってあるんですもの」
「そうそう」キヨウさんが頬杖を外します。「ちゃんと学校、行ってるの?」
「はい」
 皆勤賞をもらえるくらい、ちゃんと行ってます。



君の瞳にうつるもの Scene2 へ続く

テーマ : 二次創作 - ジャンル : 小説・文学

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