大空白時代
『天元突破グレンラガン』二次創作小説ブログ。ロシウ中心のシリアス小説だけだと思います。時折メルヘン入りつつ(笑)ゆる~く設定捏造してます。
2008.01.13 (Sun)
君の瞳にうつるもの Scene2
『天元突破グレンラガン』
戦いが終わって、新政府はいろんな施設と仕組みを新しく作りました。学校もそのひとつです。たくさんの子供たちが通って、勉強をしています。
「毎日、授業が楽しいです。いろんなことを教えてもらえますから」
「結構人気あるんだよ、ニアは。特にちっちゃい子が良く遊びに来ててさ」
政府の仕事をしなかった私やキヤルも学校に通っています。キヤルの方が年齢は少しだけ上ですけれど、習熟度別の制度をとっているので教室は同じです。
「そうなの。それを聞いて、ちょっと安心した」
失礼します、とウェイトレスさんがやって来ました。シブーストはキツネ色。すごく大きなプリン。
運んできたものを全部置いたウェイトレスさんに、ご注文はお決まりでしょうか?と再び問われました。
私は慌てて適当にケーキの写真を指さして「これと、紅茶をお願いします」と言いました。どうせ、おいしそうに見えないのはみんな同じです。
それを苦笑するように見ながら、キヨウさんは「少しね」と続けました。
「心配していたの。どうかしら、って」
私が首をかしげると、キヤルが大きく頷きます。
「オレのことよりも、よっぽど心配してたよな」
「あら、あんたのことだって心配してたわよ? 喧嘩してないかしらって」
「ひどいなあ、ケンカなんてしないよ。大人しいもんだよねえ、ニア?」
「キヤルも小さい子に好かれてるもの。良く休み時間に庭でぐるぐる回って遊んだりして」
「それは遊ばれてるんじゃないの?」
「ますますひどいこと言うお姉ちゃんだ」
キヤルは生クリームをすくい取っています。
「何を隠そうオレも楽しいのだよ、学校」
キヤルは、ねー、とスプーンを口に運びます。
「シモンも、ロシウのヤツもさ、学校、来ればいいのに」
キヨウさんは「そうねえ」と苦笑します。
「本当はそうすればいいんだけど、あの子たちはね……」
「仕事してるからね、わかってるよ」
言ってみただけ、とキヤルはメロンをかじりました。でも、そうね、本当に。
「二人とも学校に来ればいいのに。お仕事大変なのはわかりますけれど。勉強するって楽しんですもの。ねえ?」
うんうん、とキヤルも頷いています。
「意外とね。これでテストと宿題がなけりゃ最高」
そう、勉強することは本当に楽しいです。
今から思えば、本当に私って何も知らなかったんですね。
テッペリンにいた時は勉強なんて、少しもしていませんでしたから。歌を唄ったり、スポーツをしたり。文字を読むこと自体は出来ましたけれど、それだからといって、本を読むこともあまりありませんでした。
「クラス担任の先生がね、もう厳しいひとでさ、山のように宿題を出すの。勘弁してほしいよなあ」
「そうかしら。私は結構、楽しいわ」
うんざり、という目でキヤルは見返します。
「きっとね、そういうふうに思ってるのニアだけだと思うよ」
「そう?」
先生の出す宿題は、こなすよりも調べることの方が大変な宿題です。たとえばブタモグラ料理のレシピ本を作るとか(元調理主任として見逃せない課題でした)、自分や村の名前の由来を調べるとか。最近の農地運営方法とか。
授業が終わっても、宿題をしたり、先生と話したり。そういう時間が最近は増えました。
「いいんじゃないの?」
ひととおりキヤルが宿題のことを話し終えると、キヨウさんはプリンに手を伸ばしました。「ん、美味し」と目を細めて、
「課題をただこなすより、自分で調べた方が身に付くんだから。レポート書くのだって、将来役に立つはずよお。面倒なんだから、本っ当に」
実感がこもってます。キヤルが「ははん」と鼻を鳴らしました。
「さては、お姉ちゃん。ロシウのヤツに負けてるな?」
「うるさいわね」
今日初めて、キヨウさんは眉をしかめました。
「なかなかオッケーくれないのよ、あの子。食糧局レポートなんて簡潔で構わないはずなのに『もっと詳細を』なんてすぐに指摘するの」
書き直すのはあたしなのよー、と困った顔で笑うキヨウさんに、キヤルはスプーンを軽く向けます。
「ダヤッカに書かせりゃいいじゃん、そんなの、局長なんだし。ってゆーか、ダヤッカがそれでいいって言えば、それで通る問題なんじゃねえの?」
「それがそうもいかないのよ。だってロシウの指摘はやっぱり正しいもの。政府の公式文書だって思えば、あの人は強く出られないわ」
「へい、へい」キヤルはスプーンをプリンの横に突き刺しました。「ダヤッカは優しいからねえ」
そうよ、とキヨウさんは幸せそうに笑います。
二人が最近付き合い始めたことは、ほんの少し前に教えてもらいました。「お兄ちゃんたちには内緒よ」と言われてもいるので、当分は男の子たちには内緒ですけれど。
「うん、でも本当よ」
「何が? ダヤッカは優しいが?」
「馬鹿ねえ、いい加減になさい。レポートのことよ。頭の中身を書くって言う作業ね。将来、絶対役にたつわ。どんな職業に就いたとしてもね」
「将来、ねえ……」
「将来、ですか……」
思わずキヤルと顔を見合わせてしまいました。学校を卒業したらってことでしょうか?
君の瞳にうつるもの Scene3 へ続く
【More・・・】
戦いが終わって、新政府はいろんな施設と仕組みを新しく作りました。学校もそのひとつです。たくさんの子供たちが通って、勉強をしています。
「毎日、授業が楽しいです。いろんなことを教えてもらえますから」
「結構人気あるんだよ、ニアは。特にちっちゃい子が良く遊びに来ててさ」
政府の仕事をしなかった私やキヤルも学校に通っています。キヤルの方が年齢は少しだけ上ですけれど、習熟度別の制度をとっているので教室は同じです。
「そうなの。それを聞いて、ちょっと安心した」
失礼します、とウェイトレスさんがやって来ました。シブーストはキツネ色。すごく大きなプリン。
運んできたものを全部置いたウェイトレスさんに、ご注文はお決まりでしょうか?と再び問われました。
私は慌てて適当にケーキの写真を指さして「これと、紅茶をお願いします」と言いました。どうせ、おいしそうに見えないのはみんな同じです。
それを苦笑するように見ながら、キヨウさんは「少しね」と続けました。
「心配していたの。どうかしら、って」
私が首をかしげると、キヤルが大きく頷きます。
「オレのことよりも、よっぽど心配してたよな」
「あら、あんたのことだって心配してたわよ? 喧嘩してないかしらって」
「ひどいなあ、ケンカなんてしないよ。大人しいもんだよねえ、ニア?」
「キヤルも小さい子に好かれてるもの。良く休み時間に庭でぐるぐる回って遊んだりして」
「それは遊ばれてるんじゃないの?」
「ますますひどいこと言うお姉ちゃんだ」
キヤルは生クリームをすくい取っています。
「何を隠そうオレも楽しいのだよ、学校」
キヤルは、ねー、とスプーンを口に運びます。
「シモンも、ロシウのヤツもさ、学校、来ればいいのに」
キヨウさんは「そうねえ」と苦笑します。
「本当はそうすればいいんだけど、あの子たちはね……」
「仕事してるからね、わかってるよ」
言ってみただけ、とキヤルはメロンをかじりました。でも、そうね、本当に。
「二人とも学校に来ればいいのに。お仕事大変なのはわかりますけれど。勉強するって楽しんですもの。ねえ?」
うんうん、とキヤルも頷いています。
「意外とね。これでテストと宿題がなけりゃ最高」
そう、勉強することは本当に楽しいです。
今から思えば、本当に私って何も知らなかったんですね。
テッペリンにいた時は勉強なんて、少しもしていませんでしたから。歌を唄ったり、スポーツをしたり。文字を読むこと自体は出来ましたけれど、それだからといって、本を読むこともあまりありませんでした。
「クラス担任の先生がね、もう厳しいひとでさ、山のように宿題を出すの。勘弁してほしいよなあ」
「そうかしら。私は結構、楽しいわ」
うんざり、という目でキヤルは見返します。
「きっとね、そういうふうに思ってるのニアだけだと思うよ」
「そう?」
先生の出す宿題は、こなすよりも調べることの方が大変な宿題です。たとえばブタモグラ料理のレシピ本を作るとか(元調理主任として見逃せない課題でした)、自分や村の名前の由来を調べるとか。最近の農地運営方法とか。
授業が終わっても、宿題をしたり、先生と話したり。そういう時間が最近は増えました。
「いいんじゃないの?」
ひととおりキヤルが宿題のことを話し終えると、キヨウさんはプリンに手を伸ばしました。「ん、美味し」と目を細めて、
「課題をただこなすより、自分で調べた方が身に付くんだから。レポート書くのだって、将来役に立つはずよお。面倒なんだから、本っ当に」
実感がこもってます。キヤルが「ははん」と鼻を鳴らしました。
「さては、お姉ちゃん。ロシウのヤツに負けてるな?」
「うるさいわね」
今日初めて、キヨウさんは眉をしかめました。
「なかなかオッケーくれないのよ、あの子。食糧局レポートなんて簡潔で構わないはずなのに『もっと詳細を』なんてすぐに指摘するの」
書き直すのはあたしなのよー、と困った顔で笑うキヨウさんに、キヤルはスプーンを軽く向けます。
「ダヤッカに書かせりゃいいじゃん、そんなの、局長なんだし。ってゆーか、ダヤッカがそれでいいって言えば、それで通る問題なんじゃねえの?」
「それがそうもいかないのよ。だってロシウの指摘はやっぱり正しいもの。政府の公式文書だって思えば、あの人は強く出られないわ」
「へい、へい」キヤルはスプーンをプリンの横に突き刺しました。「ダヤッカは優しいからねえ」
そうよ、とキヨウさんは幸せそうに笑います。
二人が最近付き合い始めたことは、ほんの少し前に教えてもらいました。「お兄ちゃんたちには内緒よ」と言われてもいるので、当分は男の子たちには内緒ですけれど。
「うん、でも本当よ」
「何が? ダヤッカは優しいが?」
「馬鹿ねえ、いい加減になさい。レポートのことよ。頭の中身を書くって言う作業ね。将来、絶対役にたつわ。どんな職業に就いたとしてもね」
「将来、ねえ……」
「将来、ですか……」
思わずキヤルと顔を見合わせてしまいました。学校を卒業したらってことでしょうか?
君の瞳にうつるもの Scene3 へ続く
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