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2007.09.16 (Sun)

あの空の向こう側  Chapter3 

                               『天元突破グレンラガン』


【More・・・】


 振動で、ロシウは目を覚ました。
 薄暗い車内、ゆっくりと車が足を折り畳む揺れがやって来る。
「目が覚めた?」
 ダリーとギミーがくすくす笑っている。
「……寝ちゃったのか。起こしてくれればいいのに」
「仕事のしすぎなんだよ。ぐっすり寝てるんだもんな」
 ばつが悪くて苦笑がもれる。耳から外したイヤホンを切っておいてくれた端末に収納して、ポケットに突っ込んだ。結局なに一つ頭に入らなかった。やっぱり今日は少し、呑みすぎたようだ。
 しんと寝静まった住宅街の中を、車が遠ざかっていく足音が響く。この子たちが帰ってくるなんて何年ぶりだろうと思いながら前庭を横切り、鍵を開けた。
「ただいま…」
「うわー、全然変わってない…」
 リビングに入るなり、二人は嬉しそうに声を挙げた。
「当たり前だよ。ついこの間までここに住んでたんだから」
 家族用のフラット。カミナシティが整備された時にもらって、それ以来住んでいる家。最初は3人で、二人がグラパールパイロットになるために出て行ってからはロシウ一人が住んできた家。
 家具類やソファの位置、キッチン道具の並び。二人がいなくなってから変えたものはひとつもない。変える気にならなかった、というのが正しい。いつ帰って来ても大丈夫なように。
 着替えは?と聞くと、二人はそれぞれ鞄を出す。用意がいいのはロシウの育て方のせいか、それとも数年の軍隊生活のたまものか。
 それからは一緒に住んでいた時そのままに勝手気ままに動いた。
 もちろん二人の部屋もそのまま残してあるし、忙しい仕事の合間に家に戻った時には、きちんと風通しもしてあるからすぐに休めるようになっている。あとは洗濯したシーツとかカバーとかを出して渡して     おやすみなさい。
 そして。
 やっぱりロシウは落ち着かなくて眠れない。
 さっき車の中で寝てしまったせいで、ほんの少しあった酔いもすっかり覚めてしまっている。それに何よりも、明日のことを考えると眠れなかった。
 何度目かのため息をついて、とうとうロシウはベッドを抜け出した。
 キッチンに行こうと廊下に出ると、暖かなオレンジの光がともっていた。ああ、昔の癖が出たんだなとおかしくなる。
 家を手に入れて、しばらくして「ダリーもギミーも自分の部屋で寝るようにしなさい」と言ったのはロシウだ。それでも夜中、いつでもロシウの部屋に来れるよう、廊下の灯りをつけていたことを思い出す。二人が大きくなって、怖い夢を見てもロシウのベッドを必要としなくなっても。
 そして二人が出て行ってからは、ずっと灯すことを忘れていたのに。
 キッチンでお湯を沸かす。ポットを置く音さえ意識する。この夜の中に眠ろうとする自分以外の誰かを思うのは、久し振りだ。
「……ロシウ?」
 そっと呼ばれて振り返ると、戸口にダリーが立っていた。
 見覚えのないパジャマを着て、ふわふわした長い髪の毛が背中まで伸びている。なんだか『女の子』なんだなと不意に思った。グラパールのハンガーで会ったりした時にはそんなに思わなかったことなのに。一緒にいなかった期間は、どうやら大きかったようだ。
 ロシウは自分のカップをあげた。
「飲む?」
 うん、とダリーは笑う。笑顔は昔のまま、変わらなかった。



 二人でソファに座って、黙ってお茶を飲んだ。ハーブの匂いが暖かく鼻をくすぐる。くっついたダリーが暖かい。
「ここで大喧嘩、したよね」
 言われてすぐに思い出した。思い出すと同時に少し笑った。
「したね。二人とも頑固だったなあ」
 グラパールパイロットになる、と言い出した時のことだ。養成学校に入ると言ってきかない二人を、なんとか思いとどまらそうと、随分説得した。というか喧嘩した。二人と大声で言い争った唯一のこと。
「あれはロシウが頑固なの。ダメだ、ダメだ、しか言わないんだもん」
「そうだったかな? …何もグラパールじゃなくても、って思ってはいたけどね。それまで漠然とだけど僕の手伝いをしてくれると思ってたから」
「うん、知ってた。それはね……知ってて、悪いかなって思ってた」
「悪くないよ」ロシウはダリーを覗き込む。「それは僕が勝手に思っていたことだから。それにパイロットのダリーに、僕は今、すごく助けられている」
「…俺は?」
「ギミーもだ」
 振り返って見た、ちょっとふくれた顔が幼くてかわいい。
「ダリーも、ギミーも、すごく立派になった」
「なんか、すげえ子供扱い」
 ま、いいや、と言って、ギミーもロシウの隣にすべり込んだ。ロシウ越し、ダリーに問いかける。
「何の話?」
「養成学校に入る時の話」
「ロシウが頑固だった話かあ」
「…そんなに頑固、だったかなあ?」
 そうだよ、と声を合わせられるとさすがにショックだった。
「だいたいさ、俺たちがグラパールに乗りたかったのって、ロシウのせいなんだからね」
「…初めて聞いた」
「初めてしゃべるもんな? まだグラパールが開発された頃、毎日ロシウってグラパールの話ばっかしてたんだよ、覚えてる?」
「うんうん、してた。リーロンさんが構築したシステムがすごいとか、これからはグラパールが地上を守るんだって」
 うーん、とロシウは苦笑する。確かに初期開発の頃はまだ二人とも幼くて、それをいいことにさんざん成果を語っていた覚えは確かにある。それが原因だったとしたら、皮肉だ。
 入隊を志願した時の二人は軍隊に入ること、何かあった時にグレン団のように自分たちも戦いたいと言っていた。だからといって、いのちをやりとりするような組織に、わざわざ入れたくはないという思いが強かった。
 だからさ、とそんなロシウの内心を知らずにギミーは続ける。ちょっと照れたように笑いながら。
「俺はグラパールに乗りたかったんだ。えーと、ロシウが作った機体で、皆で作った街を守りたかったんだよ!」
「あたしも、そう。ロシウの作ったグラパールに乗って、ロシウたちを守りたかったの!」
 照れたように、ではなくて。ふたりとも、薄暗い中でもちょっと頬が赤くなるのがわかって。ぷっとロシウは吹き出した。
「ロシウ、ひどいっ」「うわっ、笑うの、ここで」
 ごめんごめんと言いながら、ロシウはぎゅっと二人を抱きしめた。やっぱりダリーとギミーだ。いつでも一緒で、いつでも素直な子供たち。
 結局ロシウが折れる形で、二人はこの家を出ていった。養成学校に入学した時、シモンと並んでその入学を祝った。制服に身を包んだ二人を見ると、ただただ誇らしい気持ちでいっぱいになった。
 自分の手を離れて、急に大人びた顔付きになっていくのを見るのは寂しくもあったけれど、やっぱり嬉しいことだった。並み居るパイロットの中から抜擢される実力をそれぞれ持って、グラパールを駆る姿が自信にあふれていて。
 いつまでも寝顔を覗き込んでいい子供じゃないと、そう思っていたのに。
「……ありがとう」
 抱きしめた腕の下から、ダリーが「暑いよ」と言った。ギミーが「苦しいよ」と言った。
 けれど二人とも、ロシウの腕をほどこうとはしなかった。


あの空の向こう側 Chapter4 へ続く

テーマ : 二次創作 - ジャンル : 小説・文学

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