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2007.09.16 (Sun)

あの空の向こう側  Chapter4 

                                       『天元突破グレンラガン』


【More・・・】


「忘れ物はないね?」
 うん、とダリーは頷き、その後ろでギミーが呆れたように笑う。
「ロシウ、それ訊くの3回目だ」
 そうか、と苦笑するロシウは、長い髪を先の方で緩くまとめて、襟ぐりの広いモスグリーンのシャツを着ている。ダリーは、昨夜のグレイのパジャマ姿を思い出して、ちょっと笑った。白くない服のロシウを見ると、家に帰って来ているんだなと思えるから。
 昨夜、あのままソファで3人、朝まで眠った。目が覚めるとロシウはもう起きていて、昔のように朝ご飯を作ってくれた。本当を言うと、ロシウはあまり料理が得意じゃない。今日の卵も少し焦げていたけど、それがロシウの卵焼き。ギミーも「苦い」って言いながら、全部平らげた。
 天気がすごくいい。
 良く晴れた、青い空。雲がまばらに飛んで、陽射しが暖かく降り注ぐ。宇宙に出るのにちょうどいい、澄み切った空気。
「やっぱり僕も一緒に出ようか?」
「いいって。まだ早すぎるよ。誰も来てないよ」
 グラパール隊は、ガンメンやグレンラガンより一足早く地球を飛び立つ。今はまだ、夜明けから間もない。ロシウが出勤するのはもっとずっと後の時間だ。
「あんまり上司が早く行っても、下の人間が困るの。ロシウは働き過ぎっ。俺らがいなくてもちゃんと家に帰れよ」
「約束したからね」と、ロシウは渋々頷く。「ちゃんと家に帰るよ」
 それでいい、とギミーがもったいぶって言ったその時、遠くから耳慣れた足音が聞こえてきた。迎えの車が来たのだ。
 ギミー、とロシウはギミーを抱きしめる。おとなしくギミーもロシウに手を回すのを見て、ダリーは空を見上げた。本当に、いい天気。
「ダリー」
 呼ばれて振り返ると、今度はギミーが空を見上げていた。おいで、とロシウに招かれる。
 うん、とダリーも手を伸ばした。涙が出そうになって、息を吐くと笑顔になった。すっぽり抱きしめられて、ぎゅっと背中に手を回す。
「元気で、ダリー。ずっと祈っているから」
「ロシウもね。身体に気をつけてね。ちゃんとご飯食べてね」
 くすっと頭の上から笑みが降ってくる。「ギミーにも言われたよ。そんなに不健康にしているつもりはないんだけど」
「嘘。すぐにお腹空いてることも忘れちゃうのに?」
 ロシウは声をたてて笑った。ぎゅっと回す腕に力が込められる。「わかったよ、ダリー。ちゃんと食べるようにする」
 もう一度、ロシウにくっついて、そしてダリーはロシウから離れた。もうギミーは車に半分乗り込んで、待っている。
「行ってらっしゃい」とロシウは言った。


 車が車高を上げる。ひと振動ごとにロシウが離れていく。モスグリーンが少しずつ小さくなって、車が角を曲がって姿が隠されてしまう。
 それでやっと、ダリーもギミーも前を向く。ついたての向こう、運転手がのんびりとレバーを操作している。
 沈黙が降りると、もう駄目だった。涙が溢れて、ぱたっと鞄に落ちた。
「……馬鹿だな」
 止まらない涙のままギミーを見ると、車の窓枠に頬杖をついて外を見ていた。
「泣くぐらいなら、言っちゃえば良かったのに」
 馬鹿ね、とダリーは涙をぬぐう。
「言える訳ないじゃない。言ったらロシウが困るだけだもの。それに」
「それに?」
「それに宇宙になんて行きたくなくなっちゃう。居たいもの! ロシウの側に居たいものっ」
 最後は嗚咽混じりになった。涙を止めようという気もなくなって、ダリーはただ泣きじゃくった。
「泣くなよ……ごめん」
 ふわりと手が伸びて、そのままギミーに抱き寄せられる。
「誰のせいだと思ってるのよ、馬鹿ギミー」
「俺のせいかよ……。泣くなよ。俺まで泣けてくるだろ」
 困ったようだったギミーの声が、だんだん割れてくる。「あんたまで泣かないでよお」
 ずっ、とギミーが鼻をすする音がして、ダリーもギミーに手を伸ばした。
「うるさい、馬鹿ダリー。おまえのせいだからな」
 ロシウと大喧嘩して入った養成学校で、良くこうして二人で泣いた。ロシウに会えないのが辛くて、ロシウと話せないのが悲しくて。
 小さい頃、怖い夢を見たときにはロシウのベッドに良く潜り込んだ。潜り込まなくなっても部屋を少し空けて、寝顔を見るだけで安心できた。
 でもその寝顔がだんだんと苦しげになることが多くなって。もう甘えられる歳じゃないんだと気が付いた。毎日疲れて帰ってくるロシウを助けたいと思って、グラパールを選んだ。だから間違ってない。ロシウを守ることが出来る力を、私たちは手に入れた。
「……帰って来ような、ダリー。帰って来よう」
 グラパールはガンメンに及ばない。けれど絶対、生きて帰る。これから戦いに行くのに『生きて帰ろう』なんて虫が良すぎるかもしれない。
 だからロシウにさよならは言えなかった。
 ロシウも何も言わなかった。ただ、行ってらっしゃいって    
「帰ってこようね、ギミー。それで」
 ぽろぽろとダリーの涙がこぼれてギミーの膝をぬらす。
「二人でただいまって、言おうね」



私たちが帰るのは、あなたのところだから。



                                                  終

テーマ : 同人小説 - ジャンル : 小説・文学

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