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2009.05.30 (Sat)

Fly highly Chapter5 

                                       『天元突破グレンラガン』



【More・・・】














 遠くの方でシャクの怒鳴り声がする。
「消灯! 消灯!」
 いつもの声。刀をがんがん振り回して、ばちばち電気のスイッチを切っていく。声そのものに断ち切られるように、見えている光が消えていく。もうすぐ、ここも真っ暗闇になっちまう。
 背中を冷やす土の感触にも飽きてきた。
「……戻るかあ」
「へ、ぁっ!」
 言って身体を起こすと、ずっと側にただうずくまっていたあいつはなんとも言いようのない声を上げた。暗闇に慣れた目でも、泡喰ったような顔をしているのがわかる。
「……なんだよ、それ」
 まただ。舞い戻ってくるこのイライラ。
 立てた膝を半抱きにする腕にも力がこもった。自然低くなった声に、ますますこいつは慌てて無闇に手をばたつかせる。
「え? えええ、と」
「えええ、じゃねえだろ、おまえ。いつまで転がってる気なんだよ? それとも、帰んねえ気なのか?」
 当然返ってくるだろう否定の言葉がない。驚いたことに、こいつは台詞を聞いた途端、しゅんと肩を落とした。
「うちに帰っても別に、何にも、ないし」
 地面に正座して、うつむき加減にこいつは言う。
 際限なくイライラさせる態度だ。思わず出た舌打ちに、びくりと顔を上げる。もはや泣きそうだ。
「しけてんなあ。だからって殴られた所に一人でいるか、フツー」
「い、いつもは俺だって帰るよ! でも、今日は……今日は……」
「今日は、何だよ?」
「今日はカミナが、いるし……」
 はん、と俺は平手で自分の額を叩く。
「みっともなく寝転んでる俺を置いて帰れねえと、そういう了見か? いらねえ。いらねえ。そんな情けを掛けられるとは、俺も」
「そんなんじゃないよ!」
 思ったよりも力強い声が遮る。
 なんだ、そういう声も出せるんじゃねえか。そう手の影から見据えたのもけれど一瞬「そんなんじゃない」と、もう一度繰り返した声は再び地面に吸いこまれた。
 ねえ、とこいつは言う。
「何で助けてくれたんだよ?」
「……行けと言われて『はい、そうですか』と行けるカミナさんじゃあ、ねえからさ」
「そうじゃないよ。俺なんて何されてても……みんな、放っておくのに、どうして助けに入ってくれたんだよ」
 つまんねえことを訊くヤツだ。加えて気も回らねえときているらしい。正座してるのも相まって、こうなるとテコでも動かねえツラに見える。
 俺はため息をついた。
「じゃあ、訊くがな。どうしておまえ、抵抗しなかった?殴られるまんまで平気なのかよ?」
「狡いよ。訊いてるのは俺なのに」
「うるせえ、黙れ。今訊いてんのは俺だ」
 ゆるゆると、ヤツは頭を垂れた。
「だって……抵抗しても最後には、殴られるのは同じなんだ。やっぱりそれはイヤだから、前は逃げようとしてたけど……大人しくしていれば、それだけ早く気が済んでくれるみたいだから……」
 結局、こいつもくだらねえヤツだった。そういうことか。
「だから殴られるまま、か?」
 声ににじんだ色に気付いたかどうか。ヤツは顔を上げた。睨め上げる目だけは一丁前か?
「仕方ないじゃないか! 村長は俺をダシにみんなを煽るし、俺なんて身体こんなに小さいし、相手は三人もいるんだ! カミナだって、勝てなかった癖に!」
 言ってしまってから気がついたのか、ヤツははっと口をつぐんだ。小さく「ごめん」と口ごもる。
「いいってことよ。確かに今回は俺の負けだ。事実だからな。……けどよ」
 俺は立ち上がる。
 こいつを見るといつもイライラする理由がわかった、と思った。おう、すっきりしたってもんだ。これで思う存分無視を決めこむことが出来る。
「次は、違うぜ。潰された面子を抱えてちゃあ、吸う息だって腐っちまう。そんなのはまっぴら御免だね。わかってんのか、おまえ?
 テメエの面子は結局の所、テメエでしか守れねえんだ。それが最後の気概だろうが。それすらなくて、おまけに逃げる気もありゃしねえなら助けてやろうなんて甲斐もねえ。違うか?」
「……違わ、ない……」
「わかったら立てよ。地面に向かって息吐いてんじゃねえ。顔上げろ! 仕方ねえ仕方ねえ、そう言う自分が一番仕方ねえのに気付いた所を見せてみろ!」
 ……空回りだ。
 うつむいた後ろ頭に落とす言葉は、そのまま俺自身にも跳ね返って突き刺さる。
 こんな穴蔵村に住むのは嫌だ。ここは俺の居場所じゃねえ。ただそうして管巻き歩いて憂さを晴らしているだけならば、そうとも、一番くだらねえのはこの俺自身だ。
 シャクの目が無ければ、とヤツは言った。どんなに煙たがっても、逃げたとしても、俺たち親のない子供だった人間は、村長の紐付きから逃れることなんかできやしねえ。
 だからといって毎日生活のためだけに土を掘って、ブタモグラの世話をして。そうして日々に追われて月日は過ぎて、歳だけ無駄に積み重ねちゃあ、いつか死ぬためだけに生きるのか?
 違うだろう!
 この村以外にも生きる場所はあるはずだ。それが地上にあるのなら、俺は迷わず地上に出る。いつか親父が行って旅したように、今度は俺がおん出てやる。必ずだ!
「……まあ、このままでいてえってもんを止めろとは、言わねえよ」
 垂れた頭は、上がらねえ。言葉を落としこむと、迷うように肩が揺れたが、それだけだった。……待っていたんだろうかこいつの答えを、俺は。
 じゃあな、と俺は言った。
「それだけだ。もう二度と助けねえし、もう二度と会わねえ。好きにするさ。お互いにな」
 そうして踵を返した。二度と振り返らない心づもりで。
「カミナ!」
 腕をつかまれた。ざらついた指の感触にはっとした驚きを、俺は胸の内に押しこめた。振り返ると、あいつは俺を見上げていた。まん丸な目がそれまでないほどに見開いて。
 俺だって、と声は続く。
「こんなのはイヤだよ! 毎日穴を掘るのは別にいい、俺に出来るのはそれぐらいしかないから! でも殴られるのは、こんな……こんなのが毎日続くなんてやっぱりイヤだ!」
 だったら、と俺は言う。
「明日、作業に行かねえで、ここに来いよ」
 え?と、つかまれた腕から指が離れていく。
「俺たちは明日、こんな村からおん出て行く。坑道を掘り進めるんだ。地上へ出るぞ」
 口からつるりと言葉が出た。考えもしてねえ。諦めたと思ってた。なのにつるりと言葉が出た。
「地上に? そんなの、無理だよ」
「無理と思えや始まらねえ。無理を無理と思うんだったら、そりゃあやっぱり無理なのさ。だったら無理を無理じゃあなくしちまえば、それでいいんだ。地上に出るのは無理じゃねえ。このカミナ様の威勢が無理を蹴飛ばし散らすのよ。俺が行けると言えば地上にだって行けんだよ!」
 そんな無茶苦茶な、と口ごもってうつむきかけるその頭を、俺はぐいと押し下げる。
「カ、カミナ!」
「本当に今が嫌だと思うんなら一緒に来い。地上へ行くぞ、シモン!」



Fly highly Chapter6 へ続く

テーマ : 短編小説 - ジャンル : 小説・文学

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