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2009.05.30 (Sat)

Fly highly Chapter8 

                                       『天元突破グレンラガン』



【More・・・】









 ごがっと今までしないような音が、行く手から響いた。
 シモンがゴーグルを上げる。ライトがきらめいた。
「カミナ!」
 シモンは笑っていた。
「岩盤が砕ける! 音が違うんだ。この先が出口だ!」
「よし! シモン、良くやった! 聞いたか野郎ども!」
「おう!!」
 あいつらは一度手を止めて、そして猛然とシモンが示した一点に向かってドリルを突き立てる。シモンはゴーグルをはめ直した。再び土を巻き上げ始める。
 ひゅうと、風が通り抜けた。
「ア、アニキぃ」
 涙声を上げて、あいつらはドリルを放り出す。
 シモン一人のドリルが回転していく。再び大きく、岩盤が砕ける音がした。さっと淡い光が一筋、その先から射しこんだ。ランタンの色じゃねえ、白い光。
 ますますシモンのドリルは唸りを上げる。その先から光があふれ出して狭い穴の中を満たしていく。
 サングラス越しにもわかるその圧倒的な明るさに、俺は魅入られたように目を離せなかった。その光から、その光を生み出すシモンから。
 いっきに岩盤が崩れた。
「出口だ!!」
 ドリルの回転数が落ちていく。
 その音を背景に、あいつらはシモンを押しのける。我先にと押し合って、まろぶように外へ転がり出た。
「何をぼうっとしてる?」
 シモンは突き飛ばされた体勢のまま、その姿を呆然と見送っていた。その指の先に、土に汚れたドリルが転がっている。
「……カミナ」
 どこか夢から覚めたように、シモンはまたたく。俺はシモンのドリルを拾い上げ、差し出した。土がこびりついた茶色の手が、ドリルを受け取る。
「行くぞ。おまえがぶち開けた穴じゃねえか」
 肩を叩くと「うん」とシモンは頷いた。
 俺が肩を押すようにして、やっと穴をくぐり抜ける。その先にあったのは見慣れた光景だった。
 なんだよ、と俺は唸る。
「まだ穴蔵村にいろってことかよ!」
 シモンが開けた大穴は東の坑道に通じてしまっていた。人がいる気配はねえ。利用されてもいねえ。でも放棄こそされていないから、要所要所を電気の青い光が照らしている。穴の中にいた時には煌々と見えた光も、出てしまえば見覚えの弱々しさ。
「アニキ! 助かったんだぞ、俺たち!」
 先に出たあいつらははしゃいでいる。まるで奇跡の生還だ。まあ、あながち間違っては、いねえか。
 だから「そうだな」と俺は大きく頷いた。
「村に戻っちまったのは仕方ねえ。けど忘れんなよ。俺たちは引かなかった。いつか必ず地上へ行く、いつか必ずだ。俺たちには前に進むことしかねえんだ、覚えとけッ」
 冒険は終わった。計画は崩れた。それが事実上の解散宣言、俺にとっては敗北宣言に違いなかった。
 地上は、遠い。なんて遠い。
 あいつらが村の方向に戻っていくのを眺めながら、俺はそれだけを思っていた。何を吼えようとも、今となっては虚しいだけだ。
 土まみれになりながら、俺はちっとも変わっちゃいねえ。これからまた、息が詰まるような暮らしが待っている。
「カミナ?」
 気遣うような声音が聞こえる。やはり村に戻りかけたシモンが、少し振り返って俺を呼んでいる。
「なんだよ?」
 その、とシモンは口ごもる。「帰ら、ないの?」
「……帰るさ。こうなっちゃな」
 俺はふと思いついて口の端を歪ませてつけ加えた。
「うちに帰っても別に、何にもねえけどな」
 あ、とシモンは嫌な顔をする。
「そんな意地悪なこと言わないでくれよ。せっかくカミナのお陰で助かったっていうのに」
 俺のお陰?
 まじまじと俺はシモンを見返した。冗談だろう。俺たちを外に出したのはそう言う、おまえだっていうのに。
 けれどシモンは大真面目な顔をしていた。ドリルを頼るみたいに両手で抱いて。
「やっぱり、カミナはすごいよ。カミナがいなかったら、きっとあのまま、埋まって死んでたと思う。カミナがいてくれたから俺たちみんな助かったんだ。だから……だからありがとう」
「礼なんて、……言うんじゃねえよ」
「え? でも」
「礼なんて言うんじゃねえ!」
シモンは大声にただ、身をすくませた。ぎゅうとドリルを握りこむ。
 こいつはわかってねえのか。わかってねえんだ。どれだけ自分が凄いかを。そうか、と俺は気が付いた。だからずっと、俺はシモンを見るたびにイライラしてたんだ。
 はっきりと今、わかった。
 シモンの見せていた気弱さ、なすがままの逃げの態度。そんなものが気にくわねえんじゃなかった。俺を一番イライラさせるのは、それは、
「シモン、俺を見ろ!」
 はい!と、シモンは勢い良く返事をする。
 俺はその瞳を覗きこむ。おどおどと落ち着かなく揺れる目の中に、いつも通りの俺が映っている。虚勢の自信にあふれた俺の姿が。
「いいか、良く聞けよ。おまえのドリルはそんじょそこらにあるドリルじゃねえんだぞ。一か八かの勝負に応えるドリルなんだよ。穴を掘ったのはおまえだろ! 俺たちを外に出したのはおまえじゃねえか! わかったんなら胸を張れ! いいか?」
 言いざまに、俺はシモンの両肩に勢いよく両手を置いた。痛そうに顔をしかめるのなんか、知ったこっちゃねえ。
「俺たちが助かったのは俺がいたからじゃねえよ。おまえがいたからだ。おまえがいたから、だから俺たちは助かったんだ」
 シモンは何か言いたそうに口を開き、けれど結局そのまま閉じる。気恥ずかしそうな顔をしてただ、頷いた。
 ち、と俺は舌打ちする。
 こいつの凄さを、まず誰よりも、こいつ自身にわからせてやりたかった。凄いのは俺じゃなくておまえだと、鼻の先に指を突きつけてやりたかった。
 けれどそうしたところで簡単に納得するとは思えねえ。感情は根深い。生半可なことでは自分自身を、シモンは認めてやろうとはしねえだろう。
 そう思ってため息をついても、何かが俺の胸の内をせり上がってくるのは止めようがなかった。それはいつも感じていた、あのイライラとはまるで違う感情だった。
 何だ? このわきあがる感じは?
 指の先から、髪の先から、新しい力がわき出てくるみてえだ。それは身体中を巡ってほとばしる。いっそ叫びだしたいくらいに。
 そうか、と俺は笑う。
 こらえきれない頬そのままに口の端が上がった。そうか俺は、きっと     嬉しいんだ。
「シモン!」
 だから俺はシモンの背中をぶっ叩く。
 前につんのめりそうになりながら、シモンはまた、驚いたように俺を見上げた。
「これからは俺を、兄貴と呼べ!!」




テーマ : ショート・ストーリー - ジャンル : 小説・文学

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