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2009.05.31 (Sun)

君をさがして、明日の丘で Scene2 

『天元突破グレンラガン』

【More・・・】



 あの攻防、あの陥落から、時が流れた。
 テッペリンはかつての王の居城に相応しく、孤立した場所だった。陥落後にその跡地を利用する形で作られたカミナシティも、その名残を強く残している。
 乏しい水源、穴がうがたれでもしたようなくぼんだ地形。
 そのぎざぎざに飛び出した岩の牙の真下を、グレンラガンはゆっくりと滑空する。見下ろす町並みはまだ低い。
 陥落直後から続々集まり始めた人々は、そのまま最初の市民となった。新政府樹立に伴い発表した都市計画は、初期に所狭しと立ち並んだトレーラーハウスやバラックを郊外へと押しやった。
 等間隔に区画された町並みの機能美は、その成果と言っていい。
 高くなりつつある街並みの中心部に高くそびえるのは、やはり巨大ガンメンを再利用した新政府庁舎。その正面広場には、最近除幕式を終えたばかりの彫像が立っている。
 今日もまた、グレンラガンは天を差すその指をかすめるようにして新庁舎の中、格納庫に帰投する。
 降り立つやいなや、シモンは機体が完全に動きを止めるのも待たずにラガンを開いた。近付くゲージを器用に避け、つるつると機体を滑り降りていく。
「メディカルチェックだけは受けてくださいね!」
 グレンのコックピットから身を乗り出すロシウの声が届いたかどうか。閉まりかけた扉の向こうで片手が上がったような、そうでないような。
 ロシウがゲージを降りると、それを待ち受けていたように整備班がグレンラガンに群がった。それを一度振り返り見て、ロシウは格納庫の上部へと階段を上る。
「ただいま帰投しました」
「はい、おかえり」
 指揮室のコンソール前には、リーロンが座っている。ロシウの声に応えはしたものの、キーを叩く手は止めなかった。
「どうしたの、シモンは? あんなに急いで」
「ニアさんとの約束に遅れそうなんだそうです。遅刻すると置いて行かれてしまうとか」
「あら、かわいそうに」
 言葉とは裏腹に、リーロンの声には笑みが多い。
「ニアならとっくにキヨウ達と出掛けたわよ。そうね、三〇分以上たつかしら。約束は何時なの?」
 ロシウは壁の時計を見る。「一時間半くらい前です」
「無理ねえ」
 リーロンは手を休めずに苦笑した。ロシウはその肩越しにモニターを覗きこむ。いくつもの波形がカラフルに絡まり合って流れていく。
「さすがのお姫様も待ちくたびれるわ。男が待ち合わせに遅れるなんて言語道断。だからショッピングになんて連れて行かれちゃうんだわ」
「リーロンさんは行かないんですか?」
 すぐ側に立ったロシウを、ここでようやくリーロンは見上げた。けれどそのまま表情を変えることなく、すぐ再びモニターへと目を戻す。
「ショッピングにかける情熱は眼を磨くけど、時と場合によるわね。……言われたとおりに待っていたわよ」
「すいません」
 苦笑して、ロシウは隣の席から椅子を引き寄せた。座りながらコンソールから吐き出されるデータプリントを手に巻き取る。
「感想はいかがですか」
 ランダムに打ち出される数値に目を走らせながら、ロシウはつとめて色を乗せない声を出す。ちらりと一瞬見上げたリーロンは、モニターを見つめ続けたままだった。
 再び読むデータプリントは、予想通りの模様を示す。
「充分戦える数値だと、アタシは思うけど?」
 キーを叩く音が止まる。ロシウは顔を上げなかった。思った通り、その間隙は一瞬。再びの音と共にリーロンはすぐに言葉を続けた。
「気にするほどの乱数も出ていないでしょ? 許容範囲じゃないかしら。……ロシウ、自分で自分の可能性を断ち切る必要なんて、ないのよ。大丈夫、気にするほどの遅れじゃない」
「ありがとうございます」
 ロシウはデータプリントを丁寧に折りたたむ。リーロンの叩くキーパッドのすぐ側に置くと、たわんだそれは軽くふくらんだ。
「そう言ってもらえて、逆に踏ん切りがつきました」
「ロシウ」
 今度こそ、キーを叩く音が止んだ。今、初めてリーロンの目とかち合った。
「大丈夫ですよ。わかっていたことですから」
 笑みを浮かべながらも胸が少し痛いのは、リーロンがそんな目をしているからだ。グレンのコックピットで思ったように、これは悲しいことなんかじゃない。
「それよりも、データの精度はいかがです? 活用できそうですか?」
「え? ああ、もちろんよ」
 何か言いたそうなリーロンの声を横に、ロシウは膝に目を落とす。「良かった」と呟いて椅子を立った。
「開発途中の新機、あれにデータを移植してみましょう。もう少し精度を高める必要はあるでしょうが、とりあえずということで」
「了解。準備しておくわ」
 よろしくお願いします、とロシウは椅子を元の位置に戻す。そうしてふと、窓の外を見下ろした。
「グレンラガン、少し出しても構いませんか?」


君をさがして、明日の丘で Scene3 へ続く
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