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2009.05.31 (Sun)

君をさがして、明日の丘で Scene3 

『天元突破グレンラガン』

【More・・・】

「別に損傷もないしね。自由にすればいいわ。……シモンに、言うつもり?」
「できれば、早いうちにすませておきたくて。それと、例の話なんですが」
 ロシウは椅子から手を離しかけて、その指を椅子の背に引っかける。
「発表には少し時間をいただけますか?」
「それもご自由に。でも、発表にはってことは決めたのね」
 はい、とだけロシウが答えると、リーロンは椅子ごとロシウに向き直った。軽く手を打ち鳴らす。
「就任おめでとう、ロシウ補佐官」
 ロシウは苦笑する。
「からかわないでくださいよ。リーロン次官補」
「心外ねえ。からかってなんかいるもんですか。これで機器の開発に集中できるんですもの」
「そうしてください。科学技術局だけでもお忙しいのに、兼務お疲れさまでした。
 これからは業務に専念していただけると思いますよ。その他のことは、僕が一手に引き受けますから」
「頼もしいことを言ってくれるわね。キタンもダヤッカも、泣いて喜ぶんじゃないかしら」
「……冗談です。まだ一人じゃできませんよ」
「あら、どうかしら。アタシ達が次官補を降りたって、たぶん今までとそうは変わらないはずよ。あんたが走り回ってた実質は同じだもの。だいたい量産機計画もあんたの発案でしょうが」
 格納庫はすいている。グレンラガンの横には修理中のソーゾーシンとキングキタンがあるが、その奥にはただがらんとした空間があるだけだ。
 その収まる主のいない広大さは、未だ戦いがあることを示している。
 螺旋王がいなくなっても、すべての獣人が消えたわけではない。すべての人々が新政府の号令を受け入れたわけでもない。
「誰も、まさかこんなに戦いが長引くなんて思っていなかったからですよ。僕が言い出さなくても、いずれ誰かが言っていたことです。
 むしろ、開発に取りかかるのは遅すぎたかもしれません」
「こういうことに遅い早いはないわよ。気付いた時がスタートなんだから。
 ……あんたは、全体を見る目を持っている。そのことの方が、大事なの。それはアタシ達が持ち合わせていないものよ」
「とんでもない。僕はただ、皆さんの指示に従ってただけです。年長者の皆さんと……ヨーコさんがいらしたから、僕のような子供でも許されていた。それだけです。
 もしかしたらヨーコさんが行かれた時が、組織を練り直すいい機会だったかもしれません。でもその時はまだ、僕自身の諦めがついていなかった……」
 ねえ、とリーロンは呼びかけた。
「もう一度、考え直すことはできないの? 諦めがついていなかった、って今、あんたは言ったのよ?」
 呑みこんだ息が行き場をなくす。
 けれどそれは一瞬のこと。ロシウは薄い笑みに乗せて吐き出した。リーロンはにこりともしない。
「……いつか潮時は、来るんです」
 窓越しに見下ろすグレンラガンは整備ゲージに囲まれている。まるで囚われの身のように。
 その窓に右手を押しあてた。広げた手の下、グレンのコックピットをロシウは親指でなぞる。窓から離した指に、その冷たさが乗り移ったような気がした。
「このことが本当の原因ではないんです。このことがなくても、きっといつか、僕はグレンを降りるでしょう。降りざるを得ない。だったら……今がいい。今なら、」
 けれどその先の言葉を、ロシウは押し殺す。
 声に乗せなければそれは消えていく。だったらこのまま消えてしまえばいい。今を願ってしまうのは本当は卑怯なのかもしれないと思う、その気持ちごと。
 だからロシウは笑った。
「今ならまだ、僕はまだ何かをすることが出来る。もっと出来ることがあるかもしれないと、思うことが出来るんです」
 リーロンはただロシウを見上げた……その頬から笑みが消えるまで。真っ直ぐ見返す目をそらせたのはリーロンが先。
 時々、とため息混じりに呟く声がした。
「あんたがとてつもなく馬鹿に見える時があるのよね。本当に、時々だけど、今みたいに」
 すいません、とロシウは苦笑する。
「遠くが見えすぎるのも考えものだわ。もう少し足下を見てあげなさい、自分のために。じゃないと先が辛くなるわよ?」
 最後は笑い含みに言ってリーロンはコンソールに向き直る。ああ、とロシウも思い出したように口を開いた。
「世間はどう反応するんでしょうね? 一六歳の総司令に一二歳の補佐官。ナンバー・ツーまで子供」
「そんなの、いちいち考えていたらやっていけないわ。いざとなればいくらでも助けは入る。大丈夫よ、あんたならやっていけるから」
「だといいのですが」
 それでは、とロシウは唇の前に指を立てた。
「発表までは両方のこと、内密に」
 了解、というようにリーロンが手を振るのを最後、ロシウは踵を返す。
「……すまないわね」
 開閉する扉の稼働音。その音にさえまぎれそうな小さな声。振り返っても、キーを叩き続けるリーロンの背中が見えるだけ。
 何か言葉を返そうかと迷った息は、結局そのまま吐き出された。リーロンに見えないのを承知、ロシウは軽く頭を下げて扉をくぐった。
 足は自然と総司令執務室に向く。ニアが待っていなければ、きっとシモンはまだそこにいる。



君をさがして、明日の丘で Scene4 へ続く
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