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2007.10.08 (Mon)

さようなら、と僕らは言った  Chapter1-1 

                                     『天元突破グレンラガン』

【More・・・】



 テッペリンは陥落した。もう螺旋王はいない。
 そのことをテッペリン自身が知ったかのように、周辺すべての機能は停止した。
 聞けばグレン団と応戦していたガンメンも一斉に動きを止めたという。
 それはきっとあの時、螺旋王が息を止めた時。
 ありえない話ではない、とロシウは思う。
 ガンメンは大なり小なり乗る者の螺旋力によって動く。
 大型ガンメンだったテッペリンという建物、その産物である獣人達が乗る機械。
 すべてが螺旋王という巨大な螺旋力の影響下にあったとしても、何の不思議もありはしなかった。

 いつの間にか明けていた夜明け。人間達の勝利の朝日。
 なびくグレン団の旗、仲間の元に、グレンラガンは帰還した。
 乗っていたシモンとニア、そしてロシウは、まるで引きずり出されるようにコクピットを降ろされて、何本もの手にもみくちゃにされたり、抱きつかれたり。
 最終決戦に間に合った人々、間に合わなかった人々。
 キタンがぶんぶん振り回す旗は、とにかくよく目立って皆を引きつけた。
 彼らがもたらしたのは、ぶんどったガンメンだけでなかった。
 すぐにあちこちで火が炊かれ、おいしそうな匂いがたちこめる。
 瓶の栓がぽんぽんと青空を舞い、ものすごい規模の祝宴が始まるまで、そう時間はかからなかった。

 大きな大きなテントの中の、その更に内側に張られた小さなテントが治療室代わり。
「痛いって、そこ、リーロン!」
「がたがた言わないの、大げさねえ」
 リーロンは「痛いのは見りゃあわかるわよ」とシモンの胸に巻き付ける包帯を締め上げる。
「しっかり腕、上げときなさい」
 はーい、とシモンは答え、その隣に座ったニアがくすくす笑う。「我慢です、シモン」
 とりあえずの応急手当から、本格的な治療へ。
 3人そろってリーロンのところへ送り出されたのは、宴会始まってからしばらくたってのこと。
 差し入れられた住居用具や医療物資がごたごたと並べられる、その間に置かれたベンチ。
 ニアの笑う横顔と、言われたとおり中途半端に腕を上げているシモン。
 ああ、終わったんだ。
 並んで座る二人の背中を見て、ふうと小さくロシウは息を吐く。
 背中に当たるテントの支柱、その堅さと冷たさに寄りかかりながら、やっとそう思えた気がした。
 外へと注意を向ければ、何かを言っているキタンやそれに応じて沸く声が遠く聞こえてくる。
 その騒ぎが気になって仕方がないのか、シモンはしきりに外へと目を向けていた。
 殴り合いをしたシモンはずいぶん顔が腫れていたが、それよりも身体のダメージの方がひどいらしかった。
 周囲が静かなせいで、改めて痛みを意識したのか、外にいる時より、ここに入ってからの方が顔色が悪く見える。
 それでも、だからこそか、シモンはリーロンに戦いを物語ることをやめなかった。
 思いがけず再会した例のヴィラルをどう倒したか、外でキタンがいかに誇らしげに演説しているか。
 時々ニアや、振り返ってロシウに話を振っても、それは同意を求めるためで、すぐに自分で再びしゃべりだす。
 その話に「あらそう」「大変だったわねえ」「すごいじゃない」と相槌を入れながら、リーロンはシモンの身体を確かめていた。
 そしてやっと今、パチンと音を鳴らして包帯を留める。
「はい、終わったわ。ちょっと骨にきてるようだから、あまり激しく動いたりしないようにね」
「わかってるよ」
 なあ、というようにシモンはロシウを振り返って笑う。
「もうさ、螺旋王はいないんだから。俺が戦うことなんてないんだし」
「あら、そうかしら? 全然自覚がないのねえ。ちょっとニア、外の浮かれ騒ぎからしっかりシモンを守るのよ」
「わたしがシモンを守るのですか?」
「そうよ。ここを一歩出たら、シモンは英雄ですもの。あっちこっち連れ回されるのは目に見えてるわ。いっそのことベッドに放り込んでおきたいところね」
「そんなにシモンの怪我は重いのですか?」
 ニアの目が心配そうに包帯に注がれて、シモンは慌てて立ち上がりかけ、また座る。
「大丈夫だよ、ニア。リーロンも心配させるようなことを言わないでよね。寝てるほどの怪我じゃないんだから」
「ま、そういうことね。けど、くれぐれも急に動いたり、無理に身体をひねったりしないこと。治りが遅くなるからね。それをあんたに見ててもらいたいのよ」
「わかりましたわ」
 やっと安心したように、ニアは胸の前で手の平を合わせた。
「シモンに無茶をさせる人がいないように、守ればよろしいんですね」
 そういうこと、とリーロンが満足げに頷く側で、ロシウからはこっそりシモンが顔をしかめるのが見えた。けれどそれも一瞬のこと。
 シモン、とニアが呼びかけた時にはそのカケラもなくて。
「わたしがしっかりあなたを守ります。何の心配もいりませんわ」
「・・・ありがとう、ニア」
 しっかり、とばかりに手を握られて、シモンもすぐに笑った。はいはい、とリーロンは軽く手を振る。「じゃあ、頼んだわよ。ほら、治療が終わった人はすぐにどく」
 ああ、とか生返事をしながら、握った手はそのままに二人は立ち上がる。テントを出る寸前、シモンは振り返った。
「手当が終わったら、すぐに出てくるんでしょ?」
「行くわよ」
 うん、とシモンは手を振った。
「じゃあ、後でねロシウ」
 はい、とロシウも左手で手を振り返す。ニアの「お大事に」という声を最後に、二人は出て行った。ニアが何を言ったのか、シモンの困ったような笑い声がテント越しに響いてくる。
 リーロンは「やれやれ」とロシウに向けて肩をすくめてみせた。
「これでシモンは大丈夫でしょ」
「思ったより、怪我が軽かったみたいですね・・・良かった」
 実際にあの殴り合いを見ているロシウにしてみれば、リーロンの見立ては軽すぎた。手当を受けている間のシモンの顔色を思い返せば、むしろ安心できるけど。
 しかし「そんな訳ないじゃない」と、リーロンはその安堵を一蹴する。
「はあ?」
「本当ならねえ、やっぱりベッドに叩き込んでやりたいわよ。で、食事とトイレ以外は安静にさせる。骨が折れてなくたって全身あざだらけ、今は興奮してるから痛みなんて軽く考えてるんでしょうけど、きついはずよ。おまけに昨日の出撃から全っ然休んでないんだから、あの子」
 それは、あんたも一緒だけどね。そうつけ加えて、リーロンは手招く。
「待たせたわね、ロシウ、いらっしゃい」
 招かれるままロシウはリーロンの前、さっきまでシモンとニアが座っていたベンチに座る。
「では、どうしてシモンさんを行かせたんですか? 身体のことなのに」
 今からでも呼び戻した方がいいんじゃないかと思うロシウの、その左腕をリーロンは持ち上げる。
「どうせ外のお祭り騒ぎはシモンの顔を見るまで収まりゃしないのよ。だったら先に出してさっと終わらせちゃえばいいの。ああしてニアに頼んでおけば、ニアに無理をさせないようにシモンは自分で自分に気を配るでしょ」
 シモンがいかにニアを大事にしているか。それは傍目で、とても良くわかる。まるで彼女の表情が少しでも曇るのが許せないという程に。
 まして自分自身がニアを困らせるようなこと、例えば今みたいに、心配をかけるようなことは、
「本当ですね。シモンさんは絶対、そんなことしませんね」
 さっきの嬉しそうに顔を見合わせていたのを思い浮かべると、今度はそれが少しおかしく思えた。多分、リーロンの言うとおりだから。
 でしょう?とリーロンも笑う。
「そういうことで、シモンは大丈夫なのよ、放っておいてもね。それよりも今はあんたよ、ロシウ。右肩の他に痛むところはないの?」
 

「さようなら、と僕らは言った」 Chapter1-2   へ続く


  

テーマ : 二次創作 - ジャンル : 小説・文学

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