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2007.10.13 (Sat)

さようなら、と僕らは言った  Chapter1-2  

                                     『天元突破グレンラガン』

【More・・・】

 

 訊かれて、ロシウはふるふると首を振る。
 痛いと言えば、リーロンの訊く右肩含めて全身痛い。
 でもその右肩も応急手当とはいえ、ちゃんと手当てされている。
 シモンのように身体中が傷だらけになった訳じゃない。
 腕や足や、打ち付けた横腹。動くたびにどこかしら少し疼きはするけれど、訴えるほどの辛さじゃない。
 そう?と言いながら、リーロンは首を傾げたが、そのままロシウの身体を調べ始める。
 胴を軽く叩いて「痩せすぎてる」とか「こんな細いあばら、よく折れなかったわね」とか言いながら。そのたびに、少しだけ息を止めるロシウには構わずにあらかた探り終わって、よし、とリーロンは安心したように息をついた。
「目立った怪我はないみたいね。打ち身は少し残るかもしれないけど、それぐらいは名誉の負傷よ。我慢なさい」
 そうして、ロシウの右肩を覆う包帯を解きにかかる。
 もうとっくに緩んでいた包帯はするりと解けて、すぐにその下、服の上から傷全体を覆うように貼られたシートが現れた。
 シートはそれ自体が貼り付くようになっている。ぴったりと、広範囲。肩の下、二の腕まで。
「補給があるっていうのは、ありがたいことよねえ」
 そう言って、リーロンは手を伸ばして足下、引き寄せてあるコンテナに手を突っ込む。
 取り出したのは小さめの、粗末な外見の紙箱だった。側面には太字で『××シート』と書いてあるが、まだロシウには全部読めない。
「ちゃんと手当してくれてたみたいね。これ、話を聞くとすごいわよお。貼るだけで傷口を保護して、薬にもなるんだって」
 箱を開けて、中を見せてくれた。
 ロシウの右肩にあるのと同じシートがそこに行儀良く並べられている。
「あんた達が帰って来る少し前にやって来た、ええっと、ああ、ポラクス村って所の人たちがね、たくさんくれたの。今もあっちで」
 と、リーロンはテントの外を示した。いくつも建てられたテントの内のひとつはそういえば、怪我をした人たち専用になっている。
「手当をしてくれているわ。さっきまでアタシも手伝ってたけど、外傷にはもってこいなの。打ち身には効果ないみたいだけど、銃で撃たれたひとは全部これで済んじゃった。包帯もいらないから手間がかからないし」
 アダイのように貧しい村があれば、シモンのジーハ村のように豊かな村がある。
 そのことすら、ロシウが知ったのはつい数週間前のこと。
 例えばこの箱一つを持ってアダイに帰ったら、どうなるだろう。村のみんなは何て言うのかな。
「いろんな村があるんですね……」
 そうね、とリーロンも感慨深そうにシートを取り出した。手の平に置いて、さらりと撫でる。
「リットナーは武器弾薬を作って、それを使って戦って……そういう毎日が当たり前だったけれど、どこか遠くで、こういうものを作って暮らしている村もあったってことなのよね。アタシ達がただ、知らなかっただけのことで。……もし、あの時に。ううん、あの時だけじゃなくて。こんないい薬がもし、あったら」
 ふと、リーロンは言葉を切った。
 そのまま手にあるシートだけを残して、箱をコンテナに戻す。
「そう考えると、アタシ達ってずいぶん損しちゃってんのよね。あー、やだやだ。つまんないこと」
 それはそうと、とリーロンは少し口元に手を当てる。そして傍らのはさみを取り出した。少しためらうように一度それを宙に止める。
「手当てするのに服、切ってしまいたいんだけど、いいかしら?」
 はい、とロシウは返事をする。
 そもそもあまり服は持ってない。アダイからそうだったから、どうしようかと困りはする。
 けれどシートが覆っているのは服ごとで、シートだけを剥がして治療を受けることができそうにないなら、
「どっちにしろぼろぼろですから。もう着れませんし」
「それもそうね。あとでアタシが何か持って来てあげるわ」
 あっさりと言い置いて、そのまま右袖口にはさみの刃が差し込まれた。
 ざくざくと刃が進む。裁ち鋏のように確実に刃は布地を切り裂いて、肌に触れるか触れないかすれすれを冷たさが走っていく。
 思わずロシウが首をすくめたのは、その感触に背筋が震えたから。ぴたりと刃が止まった。
「平気?」
「平気です」
 たぶん熱が出ている。だから刃の動きが、冷たさが、肌の上に残る気がするのかもしれない。
 刃は容赦なく、シャツと上着をシートに沿って切り裂き、そのまま脇を切り裂いた。
 ロシウは自分で、その支えを失ったただの布地を引っ張ったが、片手だと上手くいかない。
 はさみを置いたリーロンがそっと手を貸してくれて、そのまま左腕を引き抜いた。
 まるで蛇の抜け殻のように床に打ち捨てられ、とぐろを巻く緑と黒。
「痩せっぽっちねえ。ポンチョなんて着てるから騙されるんだわ」
 自分で見ても驚くほど、身体の所々に赤紫色が浮き出ていた。ここまで出ているといっそ見事な気がする。
 思わず腕を上げて眺めていると「ほら」とリーロンにたしなめられた。
「もっと太りなさいね、ロシウ。そうすれば多少コクピットで転げ回ってもそんな色にならなくて済むから」
「そうします」
「もうしばらくしたら、もっとすごい色になるわよ」
 ほんのり眉をひそめながらそう言って、リーロンは右肩のシートに手をかけた。
 少し黄色味がかったシートは、よく見ると少し血の色がにじんでいる。
「痛かったら言ってね」
 残した布地ごとにそろそろとシートをめくり上げていくと、見えた裏側は真っ赤に染まっていた。
吸いきれなかっただろう血液が、たらりと流れ出して二の腕に筋を作る。出血はまだ、止まっていなかったのだ。
 リーロンは無言のまま、シートをひとまず肩に戻した。
 手を伸ばしてコンテナの上、ガーゼを手に取る。それをシートの下にあてがうと、短く「押さえて」とだけ言った。慌てて出したロシウの手は、知らず震えている。
 シートが一気に引き剥がされる。
 心配した程の出血ではなかった。ただ露わになった傷口の上からじんわりとにじみだし、ガーゼの色を変えていく。
 今度ははっきりと、リーロンは顔をしかめた。
「良く頑張ったわね、って言ってあげたいけど」
 手がてきぱきと動いて新しいガーゼを当てる。すぐにその白さが失われていく。
「ごっそり肉をえぐられてるじゃないの。どうして言わなかったの? 言えばシモンより先にあんたの手当をしたのに!」


「さようなら、と僕らは言った」 Chapter1-3   へ続く


  

テーマ : 二次創作 - ジャンル : 小説・文学

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