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2007.10.29 (Mon)

さようなら、と僕らは言った  Chapter2-2 

                                『天元突破グレンラガン』

【More・・・】

 
 
「あー! ロシウ!」
 テントを出るとすぐ、目ざとく見つけたらしいギミーの声がした。
「いーなー! いいなあ! ジョーガン、おれも抱っこ!」
 ばふっと音がして、ジョーガンが揺れた。ロシウからは見えないが、どうやらギミーはジョーガンに体当たりしたらしい。
 そーら、とバリンボーがかがみ込む。 「ギミーはこっちだ」
 後ろから抱え込まれるように抱き上げられて、ギミーはくすぐったそうな声を立てた。
「ロシウも抱っこ! おれもおんなじ!」 バリンボーはギミーを肩車する。 「ロシウよりも高いよ!」
 そうだね、とギミーが伸ばす手を取ってロシウは苦笑した。離した子供の手は、ばたばたと今度はバリンボーの髪をかき混ぜる。
「こら、何すんだ!」
「バリンボー、ごしゃごしゃ!」
「ごしゃごしゃじゃねえ! じっとしてないと落っことすぞ!」
「いやー!」 「ギミー、」
 はしゃいで反っくり返るのが、ぴたりと収まる。呼んだのはロシウだ。
「ギミー、おとなしくしていないと危ないよ」
 はーい、とギミーは素直に応えて、でも今度はバリンボーの首にしがみつく。
「苦しいだろ、こらあ」
 バリンボーは 「そらっ」 とその場でくるくる回転し始めた。そうして振られるたび、ギミーは両手を離して笑い声を上げる。
「ロシウ」
「いえ、僕はいいです」
 ちぇ、とジョーガンはわざとらしく耳元で舌打ちする。 「やってやってもいいのになあ」
「そうだよ」
 気付けば、ジョーガンの側にキヤルが立っている。遊んでいる二人を眺めて、そしてロシウを見上げた。こころなしか、少し不機嫌そうだ。
「ロシウもやってもらえばいいのにさー。ぐるぐるって」
「いえ、僕は結構ですから」
「子供の癖につまんねえヤツぅ。なんだよ」
 その唇を軽く尖らせて、そして思いついたようにキヤルはにやあっと笑う。
「やっちゃえ! ジョーガン!」
「キヤルー」 後ろからキノンの声がした。 「嫌がってることはしないのよー?」
 キノンはテントに寄せたトレーラー、その開いた荷台に座っていた。ジョーガンが身体ごと向き直ると、少し首を傾げて手を振ってくる。
 そのキノンに向かって、キヤルはぷーと頬をふくらませた。
「こいつはちょっとかき混ぜられた方がいーんだよ。子供らしくねえもん」
「じゃあ、代わりにあんたがやってもらえばいいんじゃない?」
「オレはそんなに子供じゃないの!」
 くるっとキヤルはきびすを返す。そしてちょっと振り返って、やっぱり遊んでる二人に向かって踏み出した。
「ギミーのバーカ! もう遊んでやんねえからなあ!」
「キヤルもおいでよー」
「そーだ、キヤルも来いっ」
「バッカじゃねえの! おまえたちと一緒にすんなって」
 怒鳴りながら、キヤルは自分でもおかしくなったのかもう一度 「バーカ」 と言って、笑い出す。
「な?」 「な!」
 と肩の上でギミーとバリンボーは頷きあって、そして勢いをつけて戻ってきた。もちろん、キヤルめがけて。
「うわっ、こっち来んなっ」
 逃げるキヤルと、追いかけるギミー付きのバリンボーと、笑い声と一緒に側を駆け抜けていく。
 トレーラーの荷台で足をぶらぶらさせているキノンと同じように、それを軽く笑いながら目で追って、そしてロシウはその先の光景に目を奪われた。
 太陽が沈んでいく。
 上空、藍の空。その下、流れていく雲は赤い。
 視線の高さは視界の広さでもある。自分たちがテントを張った高台から続くなだらかな、見渡す平原。
 そこには熱のない夕陽に照らされ影を生み、びっしりと寄り集まるテントの群れが広がっていた。様々な屋根の角。大小取り混ぜた大きさのテントとトレーラー、動き回る人影。
 さっきから耳に感じていたざわめきの正体、空に向かって立ちのぼっていく幾筋もの細い煙。
大きな柱を立て、布を広げて、今しも新たに設営中のガンメンが遠く見える。その動いている機影は、ひとつではなかった。
 ロシウはぎゅっと、ジョーガンの服を握りしめた。
「……いつの間に…こんな」
「すげえだろう」
 思わず呟いた声に、同じように見渡すジョーガンの、得意そうな声が重なった。赤いサングラスに夕陽が照り映える。
「螺旋王が倒されたこと、いつかみたいにみんな知ってやがるんだ」
 治療テントに入った時、陽は中天にも昇っていなかった。その頃はまだ、テントなんてまばらにしか建ってなかった。それなのに。
 どれほどの時間が経ったことか。
 言葉で聞くよりも、その重みをロシウは理解した……痛いほどに。
「行きましょう。早く」
 ロシウはあえいだ。ゆるゆると、何かが頬を這い上がっていく。「行きましょう、皆さんのところへ」
「ロシウ」
 小さな声が、真下からした。
 右手に、ずきりとした痛みが走る。だらりとたらした指の先を、ダリーが握っていた。
「……ダリー」
「ロシウの手、あったかい……」
 言われて握り返そうとする手から、ダリーの指が離れていく。追おうとして捕らえそこなった指が、宙をつかんだ。
 ダリーはキノンの影に隠れてしまっている。キノンが少し笑いながら抱き上げると、すぐにその首にしがみつく。
「安心したのかな? さっきまでダリーもだけど、ギミーなんて泣きそうな顔してたのよ」
 くすっと、思い出したように笑う。 「それをキヤルが一生懸命 『すぐ元気になる』 って励ましてたの。ねえ? ほら、顔を見せてあげようよ?」
 キノンはそっと、ロシウに向けられているダリーの背中を叩いた。いやいやするように、ダリーのほわほわした髪の毛が揺れる。
 どうしたの?となだめるように訊くキノンの声は穏やかだ。
「ロシウは、もう大丈夫なの?」
 向けられるその声を、ロシウはどこか遠くで聞く。
 問いかけるその瞳を、ロシウはどこか遠くに見る。
 ただ自動的に口をついた答えに、「良かった」 とキノンは安心したように微笑んだ。
 ロシウが見つめる光景に目を転じて、キノンは笑う。
「びっくりするよね。こんなにいっぱいの人、どこから来たのかな? みんな、シモンに会いに来てるんだよ」
「シモンさん、に」
「さっき、あたしもお礼言われちゃったの。これで地上に出て暮らすことが出来るって。獣人に怯えないで暮らせるようになるなんて、夢みたいだって。その人、すごい喜んでた」
 まるでキノン自身が喜んでいるようだった。ダリーの背を撫でる手はゆうるりと、優しい。
「ねえ、ダリー?」



「さようなら、と僕らは言った」 Chapter2-3   へ続く


テーマ : 二次創作 - ジャンル : 小説・文学

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