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2007.11.09 (Fri)

さようなら、と僕らは言った  Chapter3-1 

                                『天元突破グレンラガン』

【More・・・】



「だっから、わっかんねえ奴だなあ!」
「わからないのはどっちよ!」
 約束通り、ジョーガンはロシウを皆がいるという大きなテントの前で降ろしてくれた。
 テントと言ってもそれまでトレーラーの窓から眺めたような、布張りのテントではなかった。茶色っぽい合板が組み合って、何本もの柱に強固に支えられている。ロシウはグレンハウスを思い出した。四角い図体に窓があり、まるで入り口が顔のようにも見える小屋だから。
 そんな少し懐かしい思いに怒声直撃、すべてが一気に引き戻された。
 先に立って小屋の扉を開けたキヤルは、ノブを握ったまま面食らったのか声も出せずに棒立ちになっている。その頭上から、ジョーガンが部屋の中を見回した。
「何やってんだ? おまえら」
 後ろがつかえている。押されてつんのめったようにキヤルが入り、ロシウを含め、他も恐る恐ると足を踏み入れる。
 狭くはないが四角いだけの室内にグレン団、自分たち以外が全員顔をそろえていた。
 奥の方のベンチに座ったシモン、その隣のニア。壁際に置かれた機械---通信コンソール、だろうか?---に寄りかかるリーロン、布袋みたいな大きな包みを間に挟むようにして別のベンチに座るキッドとアイラック、それを様子をうかがうように立つダヤッカとキヨウ。入った戸口のすぐ脇でゾーシィが煙草をくわえ、その隣でマッケンが腕を組んでいる。いつもはガンメンの整備にかかりきりのレイテやテツカン、ガバルやアーテンボローまでが壁際に立ち並ぶのは珍しい。
 けれどそうして皆の様子を観察できたのは、部屋に入ってしばらくのこと。
 まずロシウの目に飛び込んだのは、部屋の真ん中、倒れて平たくなった椅子だった。皆はそれを取り巻くようにしていたのだ。にらみ合う、キタンとヨーコを。
「えーと」
 険悪さを主に振りまく二人の向こうから、シモンがぎこちなく手を振った。
「ロシウ、もう大丈夫なの?」
 はい、と答えたものの、シモンはただ 「良かった」 みたいな言葉を中途半端に呟いているようだけで、その声ははっきりロシウまでに届かなかった。見渡した顔のどれもが皆、ぎゅっと口を閉じていたり、あらぬ方を見つめていたり。その真ん中で、依然キタンとヨーコはまるでお互いしか見えないように見つめ合っている。但し、噛みつきそうな目つきをして。
「あの」
 誰も何も言わない沈黙に、かえってロシウは口を開く。 「どうか、なさったんですか?」
「……知らないわよ!」
 先に破ったのはヨーコだ。顔をキタンから背けざま、ぎりっと、音が出そうなほどに睨まれた。長い髪が踊るほどの勢いでキタンに背を向けて、少し離れた椅子にどさりと座る。足を組み、腕を組む。その仕草のひとつひとつが行き場のない怒気をはらんでいるようだった。
 置いて行かれた格好のキタンにしても憤懣やるかたないようだ。 「あー!」 と一言叫んで髪をかきむしった腕を、勢い良く振り下ろす。
 つんとそっぽを向くヨーコに、何か言おうとしたのか口が動いたものの、結局は唇を噛みしめた。視線だけの鋭さが、そのまま戸口へ向けられる。
「おい、俺はバリンボーとジョーガンに来てくれって言ったはずだぞ」
 苛々した目つきそのままの、怒気をはらんだ声。何だよ、と返すキヤルの声もひるむほどに。
「だから呼んで来てるじゃん」
「だったらガキどもと、おまえらは出てけ。用は済んだ」
 断ち切るような言葉。まるで取り付く島がない。
 隣で、キヤルがぎゅっと拳を握るのがわかった。
 言われた言葉より、その剣幕に唇を噛みしめて、そして、
「ちょっと、その言い方はないんじゃないの?」
 キヤルが何か言い返すより先、やはり口を挟んだのはヨーコだった。組んだ膝に肘を乗せてつく頬杖の下、口の端を曲げるような笑み。
「兄弟のことに口出しはいらねえよ」
「ずいぶんな兄貴っぷりねえ? なんだってそんなにかばうの? 過保護もいい加減にすればいいのに」
「おまえなあ!」
「何よ!」
 ゆっくりと、二度。乾いた音が響いた。手の打ち鳴らされる軽い音。
「あのさあ」
 集まる視線の先で、レイテがそのまま腕を組む。 「あんたたち、まだやる気?」
 ぐっとキタンが言葉に詰まり、ヨーコが気まずそうにレイテから視線をそらせた。
 ため息にも似た紫煙を、レイテは吐き出す。
「喧嘩するのはいいんだけどさ、別に。あたしは戻るだけだし。でも子供、泣かす気かい?」
 ここで言う子供、というのはキヤルのことではない。今やバリンボーの首に両側からぎゅっと、力の限りしがみついてるギミーとダリーのことだ。バリンボーが顔をしかめるのも気付かず、怯えた顔をしている子供たち。
 煙がふうわり窓外へと流れていった。
 その間だけ、キタンはレイテをじっと見つめた。そして腹の底からつくような、そんな大きなため息をつく。
「……すまねえ。先、進まねえな……。キノン、」
 呼びざま、キタンは顎で外を示す。 「キヤルとロシウたち、表に連れてけ」
「うん……」
 キノンはロシウの手を取ったが、そのままうかがうように皆を見回した。キタンはそれに構わず、ダヤッカを呼ぶ。倒れた椅子を起こし回転させ、その背もたれに腕をかけるようにして座りながら。まるで不機嫌そのもののような顔をして。
 呼ばれた方のダヤッカ は 「ああ」 と、慌てたように寄りかかっていた壁から背を離した。ええと、と頼りない声を出す。
「そうだな」
 ダヤッカは言いよどみつつキタンと戸口とに、気遣うように目をやった。その先には目を見開いてキタンを見つめるキヤルと、困った顔で見返すキノンがいる。
 結局、ダヤッカの目は周囲をさまよって、隣に立つキヨウに留まる。
「キヤルとキノンは……?」
「大丈夫よ、このままで」
 おずおずとした問いは、すぐに明るく返された。小さくダヤッカに笑いかけたキヨウは、そのままの笑みをキタンに向ける。
「そうでしょ、お兄ちゃん? 私たち、どれだけ一緒に狩りをしてきたと思うの? いつだって、みんなでやってきたじゃない」
「でも、これは」 キタンは一度目を落とし、再び顔を上げた。 「子供に聞かせる話じゃねえよ」
「何だよ、兄ちゃん。コドモ、コドモって、オレはっ」
 キノンが空いた腕をキヤルに絡ませる。ロシウが手を離すと、キノンは一瞬だけロシウを見た。
 ごめんね、とその唇が動いて、キノンの手はキヤルの肩にそっと回される。
「オレはそんなに、コドモじゃねえよ……」
 馬鹿、とキタンは言う。
「そう言うところが子供だっていうんだよ。……いいから、行け」
 兄ちゃん、と何度目かにキヤルが呟く。その時、まるでそれが合図だったかのように、シモンの隣に座っているだけだったニアが立ち上がった。


「さようなら、と僕らは言った」 Chapter3-2   へ続く


 

テーマ : 二次創作 - ジャンル : 小説・文学

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