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2007.09.09 (Sun)

揺るがない視線  Chapter4 

                                       『天元突破グレンラガン』

【More・・・】




「ロシウ! 待って!」
 スピーチの件が終わった後、そのまま会議は地上復興の話題になった。新政府の会議は、今までのように、そしてそこにヨーコとヴィラルを加えて、走り出した。
 とりとめもなく出された意見を頭の中でなぞっていたせいで、一瞬その声に気付くのが遅れた。振り返ると、ヨーコが小走りに追いかけてくる。ロシウはその場に立ち止まった。
「歩くの早いんだから、もう!」
「すみません」
「謝られることじゃないけど」 とヨーコは苦笑する様子だ。つんと肘をつつかれて、そのまま並んで歩き出す。 「家に戻るの?」
「執務室に戻ります。すぐにでも復興プランに取りかかりたいので」
「そんな顔色して。ちゃんとご飯食べてるの? 寝てないでしょ?」
「食事はとってますし、睡眠も大丈夫です。倒れたら元も子もありませんから」
「つまりぎりぎりってことね。すぐさま事が起きるとは思えないって、さっき話したでしょう? とりあえず休んだらどうなの? シモンじゃないけど、酷い顔色なんだから」
 体調は万全ではなかったが、気は配っている。仕事をしながらでも時間になれば食べていたし、短時間の仮眠も取っていた。澱のように蓄積する疲労は、仕方がないだろう。
 第一、今はそれどころではない。確かにアンチスパイラルの攻撃が明日にもあるとは思えない。けれど破壊された街に住む市民たちは、一刻も早い政府の対処を求めている。
 それを考えれば、家に帰るなどとても考えられなかった。
 だから、ただ 「大丈夫です」 と答えると、ヨーコは思いっきり顔をしかめた。
「そういう所も昔のままね。そういう、自分のことは後回しにする癖。いい、ロシウ? せめてご飯はきちんと食べて、夜はちゃんと寝なさい。あんたのことだから根をつめて仕事しようと思ってるんでしょうけど、いつまでも起きてちゃ駄目よ」
 こうして怒られるのが懐かしい気がして、ロシウは軽く頬を緩める。
「ヨーコさん、言い方が先生みたいです」
「だって先生だもの。先生してたのよ、この一年。昔のあんたたちよりずーと小さい子供たちを教えてたんだから」
 そうだ、これ、とヨーコは端末を取り出した。 「留守電、ありがとう」
「お礼を言われるようなことは」 すっと、何かが背中を滑り落ちるような気がしてロシウは足を止めた。 「何もしていませんよ」
「そう?」
 けれどヨーコはそんなことには頓着しなかった。
「あんたから電話をもらったから、あたしはカミナシティに来ることができたのよ」
      あなたは生き残るべき人だ。お願いします。至急連絡を。お願いします。至急連絡を。お願いします。至急連絡を。
 モニターに呼びかけた自分の声が耳の奥で遠く響いた。端末を切った後ほっとして、その後、激しい自己嫌悪が襲ってきた。あの時の自分が、最もかけてはいけなかった電話。
 番号が生きていることは折に触れ確認して、ずっと知っていた。あの時までかけようとしなかったのは、政府を去ったヨーコの意志を尊重したかったからだ。
 けれどあの滅びの場面で、番号を叩かないでいることはどうしても出来なかった。そして告げてしまった、政治の中枢にいる者しか知り得ない、生き残るための情報を。
「僕はただ、」 あなたに死んで欲しくなかったんですよ、ヨーコさん。
「あの、電話がね」
 けれどロシウの言葉は吐き出す前に封じられた。
「私の背中を押してくれた」
 そしてヨーコは笑う。別れた時、6年前そのままの笑顔で。けれどその中に違う色があることに、ロシウは気付く。それは決意の色だった。
「教え子たちがいるの。あの子たちが何の心配もなく暮らせる世の中になってほしいの。そのために私に出来ることを思い出させてくれた。だからグレン団に戻れたって、今ではそう思ってる。本当よ?」
「そう、……ですか」
 どうしてだろう。ロシウは絶望感が心の底に渦巻くのを感じた。知らず手を握りしめていた。どうしてこの人たちは、皆……!


「揺るがない視線」 Chapter5 へ続く

テーマ : 二次創作 - ジャンル : 小説・文学

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