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2007.11.09 (Fri)

さようなら、と僕らは言った  Chapter3-2 

                                『天元突破グレンラガン』

【More・・・】



「キヤルさん」
「ニア?」
 引っ張られるように立ち上がったシモンの声にも足を止めなかった。ニアは一人、すたすたと歩いて戸口、キヤルの隣に立つ。
 くるっと振り返ってキタンを見据えた。
「わたしも外に出ますね。それにシモンも」
「え? 俺も?」
「はあ? おい、ニアちゃん?」
「だってそうでしょう? わたしも、シモンも」 ニアはにっこりと笑う。 「キヤルさんと同じ子供なんですから」
 そうそう、とニアは続ける。 「忘れてました。ヨーコさんもです。一緒に外に出ましょう」
「そうねえ」
 ヨーコはゆっくりと立ち上がって、わざとらしく腰に手を当てた。キタンを覗き込む。
「だってねえ、キタン? 私もシモンも、キヤルと同い年だもの。 『子供』 よねえ?」
 くっと、ロシウの隣から吹き出す声がした。
 見上げた先で、含み笑いを大きくしたゾーシィが 「悪い」 と煙草を挟んだ手を上げる。
「負けだな、キタン。こりゃあ、おまえ、分が悪い。仕方ねえよ。諦めろ」
「おまえらなあ……」
 ため息と一緒に、キタンはがくりと頭を落とした。 「……人の気も知らねえで」
「まあ、そう言うな」
 ますます笑って、ゾーシィは肩をすくめた。煙草をくわえ直す前、ちょっとニアに向けて手を振る。ニアは不思議そうにゾーシィを見返した。
「そういうことにしとけや。おまえの妹可愛さはわからんでもないがな、今は引っ込めとくのが上策だ。こうなっちゃ、爪弾きにもできねえだろ?」
 ゾーシィは手を伸ばして、ロシウの頭をぐりぐりと乱暴に撫でる。
「キヤルもロシウも、いっぱしのガンメン乗りだよ。使えるもんは使うしかねえよ」
 なあ?とゾーシィはダヤッカに顎をしゃくる。ああ、と頷いたダヤッカに、さっきまでの戸惑いはもうなかった。
「悪いが、俺もゾーシィと一緒の考えだ。信用できるガンメン乗りは、今ここにいる奴しかいないと言っていい。……すまんな」
「謝られる覚えは、ねえさ」
 もう一度、キタンはため息をつく。けれどそれは大袈裟にすぎた。吐かれた息と一緒に落ちた肩も、かすかに聞こえた軽い舌打ちの音も。そのにっと笑った顔に相殺される。
「ったくよぉ、ちったあ兄貴の言うこと聞けっていうんだよ、なあ?」
 ふてくされたような言い方を、キタンはする。ダヤッカは 「そうかもしれんな」 と苦笑して、そしてまだきょとんとした顔のまま、成り行きを見守っているニアに笑いかけた。
「と、いうことだ。誰も出て行く必要はなくなったよ」
 ニアはまた、小さく首をかしげるようにしたが、一度キヤルを覗き込んで 「はい」 と笑った。キヤルはごしごしと、手の甲で顔をこすっていた。
「キヤルさん、行きましょう?」
「……仕方ないわねえ」
 ニアがキヤルの手を引っ張って奥に歩むのと、言いつつ椅子に戻ったヨーコのため息が重なる。足を組み、腕を組む。そうしてついた頬杖の下、二度目のため息は笑い含みだ。ふくれっ面のまま、キタンは背を伸ばしてヨーコを振り向く。
「何だよ? おまえまで」
「仕方のない兄貴だってことよ。あーあ、莫迦らしい」
 あのなあ、と言うキタンの声にもう怒気はなく、ただ戸惑うような色があるだけ。「何だよ、ソレ」
「キヤル」
 ヨーコに呼ばれて、キヤルはベンチ、ニアの隣から見返す。
「あんたの兄貴って、面倒臭いわねえ? ……意外と」
 くすっと、ロシウの隣でキノンが吹き出した。それを見やって、キヤルは 「うん」 とこの部屋に入って初めて笑う。
「そうなんだよなー」
 うるせえよ、とだけキタンは言って腕を伸ばした。キヤルの髪を両手でぐちゃぐちゃにかき回す。
 本当に嫌そうにその手を払いのけるキヤルを見て、ロシウは気付く。気が付いて思わず微笑みそうになって、慌てて口元を引き締めた。きっとロシウが判ったことを知っても、キタンは嬉しくない筈だ。
 だからロシウはそのままの笑みを少し振り返ってギミーとダリー、二人に向けた。まだバリンボーの腕に抱かれたままながらも、不思議そうに見下ろす小さな子供たちは笑い返してくれる。
 もしギミーとダリー、二人に何かがあった時、絶対に、何を置いてもこの子たちを守ろうとする自分がいるのをロシウは知っている。たとえ二人が歳を重ねても、自分より強くなったとしても。ロシウにとって、二人はいつまでもいつまでも。
 思うままキヤルの髪をかき回して、やっとキタンはダヤッカを振り向いた。
「話、先進めようぜ。こいつも」 とヨーコを指さす。 「おとなしくなったことだし」
「ずいぶんな言い草ねえ? でも、ま……黙っておいてあげるわよ。本当、話進まないんだもの、あんたと話してると」
「まあ、お互い様ということで」
 はは、と気弱い笑みに戻ったダヤッカの言葉に、むっと顔を上げたのは二人が一緒。ダヤッカはすぐに目を戸口へ転じた。
「ロシウはどうする? 具合が悪いなら寝ていてもいいんだぞ。手が足りないと言っても怪我人は別だからな」
 問われても、答えは決まっている。
 けれど問われたこと自体がロシウは少しだけ、嬉しかった。問われるだけの役目を果たすことが出来るかもしれない。
「僕なら平気です。もう大丈夫ですから」
 そっと息を吸って、精一杯明るい声を出した。ゾーシィの台詞ではないが、ここで爪弾きにされてはたまらない。
「よし。だったら」
 ダヤッカはちらりとコンソール前に座るリーロンを見たようだった。
「とりあえず怪我人は座れ。長い話になるかも知れない。……もう怖がること、ないだろう?」
 なだめるような最後の台詞に、ロシウは慌てて振り返った。ギミーとダリー、二人をバリンボーから引き取ろうとして。
「すいません!」
「出てこいよ、おい」
 振り返りながらの台詞にかぶさって、誰かの優しい声がした。ロシウはギミーとダリー、二人に腕を伸ばそうとして首だけを振り向く。
 キッドが隣に置いた布袋を覗き込み---違う。
 ロシウは身体ごと向き直った。布袋じゃない。布じゃない。あれは。
 あやすように、キッドはふわふわと動く翼に、話しかけている。どうして見間違えたりしたのだろう。翼は細かく震えてひらりと羽が一枚、落ちていく。その舞い降りた床の上、土に汚れたブーツがある。さっきまでは何もなかったのに、確かにブーツを履いた足が。
「もう怒鳴ったりするヤツ、いないし」
 キッドはことさら穏やかに 「ピリオ」 と翼に向けて呼びかけた。 「もう大丈夫だ。出てこい」
翼が、ゆっくりと開く。
 にゅっと腕が突き出した。白い毛に覆われて、所々がピンク色に染まっている細い身体。ニアの横で、キヤルが素早く立ち上がった。
「キヤル」 とキタンが静かに名前を呼ぶ。 「大丈夫だ」
 何が、と言うキヤルの少し裏返った声。
 ロシウは知らずよろけて、後ろに立つバリンボーにぶつかった。
 白い頭の顔が少し上向き、キッドを見た。次いでこちらに向けられたのは金の色。露わになった肩口には血のにじんだ包帯と、やはり白い毛に覆われた胸。
 ふっと隣でキノンが息を呑んで、口元を覆う気配がする。
「獣……人」
 金色の瞳を持った白い獣人が、そこに座っていた。


「さようなら、と僕らは言った」 Chapter3-3   へ続く


 

テーマ : 二次創作 - ジャンル : 小説・文学

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