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2007.11.19 (Mon)

さようなら、と僕らは言った  Chapter3-7 

                               『天元突破グレンラガン』


【More・・・】

 

「おう、そうだ、忘れてた」
 バリンボーが声を挙げる。ジョーガンが、ぽんと手を打ち鳴らした。 「ロシウは言いたいことがあるんだった」
「言いたいこと?」
 首をかしげるダヤッカをよそに、ロシウはシモンを見返した。一瞬だけ、その向こうのニアに目を留めて。
「もう皆さんはご存じなんですか?」
「え」 シモンはきょとんとする。 「何を?」
「螺旋王が、最期に何を言ったのか」
 あ、とシモンはばつが悪そうに顔をしかめた。 「そういえば、……まだ言ってない」
「……そうですか」
 ロシウは内心ため息をつく。薄々そんな気はしていたけれど。
「いや、その、忘れていた訳じゃなくてっ」
「どうした? 何かあるなら話せ。ロシウ? シモン?」
 慌てて言い訳を始めそうになったシモンの、ばたばたした手が止まる。ゆっくりと、その手は膝の上へと落ちていった。
「螺旋王が、ロージェノムが、言ったんだ……。最期に……死ぬ前に」
 シモンは気遣うようにニアを見る。ニアは、ただシモンを見ている。
「 『百万匹の猿がこの地に満ちた時、月は地獄の使者となりて螺旋の星を滅ぼす』 って」
     沈黙が、やってきた。
 けれどそれは一瞬のこと。すぐに口々に問いかける声が満ち満ちた。なんじゃ、そりゃ?
「予言って訳? それとも警告? この場合、呪いって言う方がいいかしら?」
「茶化さないでください。百万匹の猿、というのはたぶん僕たち人間のことなんですから」
「別に茶化すつもりはないわよ。でも、それだけじゃねえ」 リーロンは肩をすくめる。 「もっと何か言ってなかった?」
 きしみ声をあげていたグレンの機体。酷い埃の臭い。血が滴る感覚、……立ち尽くしていたシモンと、寄り添うニア。強く吹き寄せていた風の音が耳に残る。
「それがさ、……よくわからないんだ」
「わからないって?」
「とにかくあの時は、本当に夢中で。ニアは?」
「お父様は……。お父様は、お父様ご自身が人類を守っていると。人が生き残るのは今の世界だけだと、そう、」
「あんだあ、そりゃ? ん? あー、いや、うーん」
 ダヤッカにつつかれて口をつぐんだキタンは、行き場のないような手でがりがりと乱暴に頭をかいた。
「わっかんねえなー。どういうことだ?」
「それがわかれば苦労はない、そういう話ね」
 リーロンは軽くため息をついた。片手で顎を支えて、少し厳しい視線が向けられる。
「あんたたちも、そういうことはもっと早く言いなさいよね」
「ごめん…」「ごめんなさい…」「すいません…」
「まあ、ほら、仕方ないんじゃないの?」
 確かにリーロンの言うとおりだったから首をそろえてうなだれるしかない。ヨーコが笑い含みに言うのも、かえって少しいたたまれない。
「3人とも戻ったばっかりだったんだし。無理もないじゃないの? それに、深い意味はないのかも知れないわよ」
「まさか」
 けれどリーロンはヨーコの取りなしを一蹴する。
「意味がないわけがないわ。この世界の王だった男の、最期の言葉なんだから。でも、そうね、確かに今は考え込んでいる暇はない、わね」
「そういうこと。ぐずぐずしてると夜明けなんてすぐよ、すぐ」
 そうねえ、と一度考えるように頷いて、そしてヨーコは 「ロシウ」 と呼びかけた。
「あんたの言いたいことはわかったわ。でも、さっきダヤッカが言ったとおり、本当に危険なのよ。一緒にいる人間が、必ずしも守ってやれる保証もないの。自分で、良く考えてみることね。行けば、自分で自分の身を守らなきゃいけない。それでもロシウ、あんたは……行きたいと思うの?」
 目をそらす理由も、断る理由もロシウにはない。
 テッペリンには獣人がいる。そしてそこにはおそらく螺旋王の真実がある。
 だからただ、ロシウは 「はい」 と答える。崩れていくテッペリン。浮かび上がる月、その白さを思い描きながら。
「行きたい、そう思います」
 先に目をそらしたのは、ヨーコの方。そらす寸前に一瞬だけ、ヨーコは目をすがめた。
「……了解」
 けれど言葉にしてはそれだけを、ヨーコは低く呟く。
 そして戸惑いの色を強くして成り行きを見守っていたダヤッカに目を移した。
「ダヤッカ。私が抜けるわ。ダヤッカイザーには私が乗る。7人もぞろぞろ行くなんて、かえって危険だもの」
「おい、ヨーコ」
「だいたい最初からそういう調べ物っぽいの、向いてないと思うのよねー、私。外でガンメンに乗ってた方が楽だわ」
 それにね、とヨーコは笑う。
「正直、テッペリンまで乗り込みたくない気持ちがまだあるのよ、やっぱり」
「無理強いは、しないわよ。だったら行きたい人間を優先させるわ」
 うん、とヨーコはリーロンに笑いかける。それに返すことなくリーロンは組んだ腕を、組み替えた。
「そうしてよ。頼むわ。……ロシウ」
 ヨーコに手招かれるまま、ロシウはベンチを立った。
 かたわらのバックパックを引き寄せたヨーコは、音高くそのジッパーを開いた。鞄の中で掛け金が外される音がする。はい、と差し出されたのは銃だった。
「ヨーコさん!?」
「何を驚いてるの? だってあんた、自分の身を自分で守るんでしょ?」
 ロシウは咄嗟に手を出しかねた。その場に立ち尽くし、ただ両手を握り合わせる。
 今まで撃ったこともなければ、そもそも持ったことさえない。ガンメンに乗って戦うのでもなく、この手に     自分自身の手に握る、いのちを奪うための道具。
 ヨーコ、と呼ぶダヤッカの声を背中で聞いた。
「ロシウに銃を持たせるのは」
「何、甘いこと言ってるの。リットナーなら子供でも銃を持つわ。危険だって言ったのはダヤッカでしょ。何もすぐに使えと言うわけじゃない。持つだけの覚悟は必要だわ。違う?」
 覚悟。その言葉にロシウは顔を上げた。行くと決めたのは、僕だ。
「ヨーコさん」
 ロシウは呼びながら、握り合わせた手を開く。伸ばした手に、ヨーコは口をつぐんだ。
「ありがとうございます」
「……うん」
 ヨーコのまなじりが下がった。まるで……少し悲しい顔のようにも、ロシウには思えた。
 どうしてだろう。くれるというのは、ヨーコさんだったのに。だから僕は受け取る覚悟を持つことが出来たのに。
 両手の平に受け取った銃の背は、緩やかな角度を持っている。
「重い、ですね」
 茶色い銃端。鋼に塗られた油が指について、そこだけがなめらかになった。
「当たり前よ。手入れはずっとしていたから、問題はないわ」
 ヨーコの声を聞きながら、ロシウはじっと短い銃身を見つめる。 弱々しい灯りに浮かび上がったその、静かな黒い光を。






「さようなら、と僕らは言った」Chapter4-1 へ続く




 

テーマ : 二次創作 - ジャンル : 小説・文学

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