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2007.11.25 (Sun)

カナリアは歌う Scene4 

                               『天元突破グレンラガン』

【More・・・】


 唾でも吐きたい気分でアイラックは振り返る。キタンが立ち尽くしていた。
 黒く染まった地面を見つめ、その隣でダヤッカも同じように立ち尽くす。キッドも、そしてアイラックも。
 しばらく口を開く気にはならず、ただどこか遠くで動き回るガンメンの音を聞いていた。
「埋めてやらなきゃ     いかんだろうな」
 ダヤッカの声が、ひどく空々しく響いた。
「何でこんな事になるんだよ!」
「……キタン」
「俺達は戦っただけだ。 殺しに来たんじゃねえ! 何であんな野郎どもが銃を振り回してんだ!?」
「キタン!」
 うるせえ、とキタンは手を伸ばしてアイラックの襟元を掴み挙げる。 「わかったような顔して俺を呼ぶな!」
 アイラックはただ、キタンを見た。歯噛みしながら、しがみつく目を。
「あいつらにとっては同じなんだよ。戦うことも、殺すことも。俺達だって同じだった筈だ」
「違う!」
 キタンの指がゆるむ。そのまま指は離れて、所在なくだらりと下がった。キタンはうつむく代わりに上向いた。
「……あいつがしたかったのは、こんなことじゃねえよ。……くそったれどもが」
 そしてキタンは握った拳を打ち鳴らす。ダヤッカ、と呼んだのはいつもの声だった。
「戻るぞ。あんな奴らを野放しにしてちゃ、どうなるかわかんねえ。どうすんのが一番いいんだ?」「そうだな」
 ダヤッカはようやく獣人達から目を離す。
「むしろ俺達が先頭に立った方がいいような気がするな。俺達が指揮を執って、まだ生き残っている獣人を捕まえるんだ。それぞれ勝手に動かれるよりはいいはずだ」
「っし! それで行くぞ!って、おい!」
 そのまま取って帰りそうになるキタンが目を剥いたのは、キッドが再びひょこひょこと動き出したからだ。
「キッド! どこ行きやがる! 帰んぞ、こら!」
「んー」
 両手をポケットに突っ込んだまま、キッドは軽い足取りでむき出しの傾斜を登って行く。
「あー、また、あいつは」
 ひとつため息を、アイラックはつく。キタン、と呼びかけた。
「すまん。あいつ、何か気になってると駄目なんだ」
 そう言い置いて、キタンの返事も待たずにアイラックはキッドを追って傾斜に足をかける。
 何だそりゃ!とキタンの声が追ってくるのはそのまま 「キッド!」 と呼びかけるが、後追いの悲しさ、追いつけない。
 緩い傾斜の崖は足をかけるとぐずぐずと崩れる柔らかい砂だった。まるで砂浜の砂のように。そこを右、左と、キッドは確かな足場を確保して身軽に登り、あっという間に頂上にたどり着いている。
「おい、気をつけろ!」
 キッドは、そのまま頂上から下を見下ろしている。ポケットに手を入れたまま、動きもせずに。
「キッド! おまえはいつも」
 ようやく追いついて、どやしつける背中の隣にアイラックは並んだ。
 キッドが見ているその光景を目にして、そして言葉を失う。立ち尽くすのは、今度はアイラックの番だった。
「……あー」
 力ないキッドの声が小さく、した。
「こりゃあ、駄目だわ……」
 そこには、崖下と似たような光景が広がっていた。
 ガンメンが幾体も力なく横たわっている。ハッチも残らず開いている。
 ただ崖下と違うのは開いたハッチというハッチ、そこから這い出るような、そんな姿が見えることだった。
 動くものは何もなかった。ただ、そこにはそれらだけが満ちている。
「ったく、勝手に動くんじゃ」
 遅れてやって来たキタンの声が途切れた。
「何なんだよ、おい、……またかよ」
 ズっとキッドが崖を降りていく。登った時と同じように軽快に。キッド!とダヤッカが伸ばした制止の手が空振った。
 アイラックも崖を降りる。降りるに連れ、なぜだか鼻を甘い匂いがかすめた気がした・・・冗談じゃない。
 キッドは手近なガンメンのハッチに手をかけ、中を見下ろしている。その肩を掴んで引き剥がそうと力を込めた。
「キッド、やめておけ」
「……あいつらの仕業じゃねえみたいだ」
「あ?」
 ほら、とキッドはコックピットを親指で示す。
「見てみろよ、アイラック。こいつら、殺されたんじゃない」
 言われて、キッドの肩を掴んだままでアイラックは身を乗り出す。
 馴染みのあるコックピットに顔をつっこむと甘い臭いが鼻をついた。咄嗟に、アイラックは息を止める。
 臭いの元は目の前に座していた。おそらく猿系の獣人か。
 おそらく、というのは、その息絶えた獣人の手といわず、顔といわず、残らず薄ピンク色の体液にまみれていたからだ。
 カッと見開かれた目からは涙のように筋を引き、口元からはだらりとはみ出ている。
 所々の皮膚が赤剥けてまだらになり、ぶくぶくと泡立つぬめりのようなものがそこにはあった。
「……っ」
 実際に間近で見たのは数瞬のこと。けれどそれで充分だった。
 撥ねるようにアイラックは身を引き、その勢いでバランスを崩してたたらを踏む。詰めていた息が変な風に喉に詰まって激しく咳き込んだ。
「…キッド…てめぇ…」
「ばーか。顔突っ込むヤツがあるかよ。俺は見てみろって言っただけだぜ?」
 あまりに咳き込みすぎて涙が浮く。アイラックがものも言えずに睨み付ける先で、キッドは更に隣のガンメンによじ登り始める。
「何をやってるんだ、キッドは?」
 やっと追いついたキタンとダヤッカは、呆れたようにキッドを見上げた。
「コックピット」アイラックは軽く示す。まだ息が荒い。「息止めて見てみろ」
 一瞬顔を見合わせて、二人はそれぞれコックピットを覗き込む。
 アイラックの苦い経験が生きて、二人ともすぐに身を離して戻ってきた。……教えるんじゃなかったか。
「何だあれは? 死んでいるん、だろうな」
「あれで生きてたらすげえよ……」
 心なし青ざめた顔で二人が言い合ったのを横目、アイラックは駆けだした。
「アイラック!?」
 問いかけるダヤッカの声を背に聞き、アイラックは走りながら腰を探った。グリップを掴んで引き抜いた。走りながら手を掛け、スライドを動かす。
 長い腕を持つガンメン、その仰向けになった機体の上。
 次々とガンメンを渡り歩くキッド、目で追っていたその姿がのけぞるようにバランスを崩していた。
「キッド!」
 がっと、足場にしたガンメンの腕が沈む。
 構わずアイラックは機体を駆け上がってキッドの背を掴んだ。そのまま引き倒しながら、銃口をコックピットに突きつける。
 その銃口の先、両手を上げていたのは一杯に見開かれた金の瞳。
「う」
 伸ばされる白い手。向けられた厚ぼったい手の平には白い毛は生えていなかった。
「撃つな。撃つなよ。撃たないでくれ!」
 両の手が頭を抱え込んだ、その白い毛に覆われた腕は色づいている。左肩口から流れる赤い色と、それよりやや広くまだらに染める薄いピンク色。
「もう戦いは終わったんだろ、ニンゲン! 俺達を殺してそんなに楽しいのか!?」
「……あのなあ」
 あまりといえば、あまりの言い分だ。戦意を削がれて、銃口すら下がりそうになるのを握り直す。
「おい、アイラック……」
 足下からの恨みがましい唸り声にアイラックがちらと見ると、キッドが不満そうにアイラックを睨み付けている。
 後ろ背を捕まれ引き倒されたままだから、妙に尻餅をついたような、中途半端に上半身を肘で支えているような格好だ。
「あ、キッド」


カナリアは歌う Scene5 へ続く

テーマ : 二次創作 - ジャンル : 小説・文学

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