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2007.11.25 (Sun)

カナリアは歌う Scene5 

                               『天元突破グレンラガン』

【More・・・】


「あ、キッド。じゃねえだろ、こら!」
 勢いをつけてキッドは起きあがる。「ったく、このせっかち野郎」
「だって、おまえが」
「おう」
 キッドはアイラックに向けて手をかざす。
「皆まで言うなよ、相棒。駆けつけてくれるなんざ、泣かせるねえ」
「勝手に言ってろよ、おまえは」 つきあってられない。 「それより、どういうことだ?」
「どういうもなにも、なあ?」
 あろうことか、キッドはコックピット内に呼びかける。
「お互いにびっくりしただけなんだよな?」
 まだ頭を抱え込んだままの獣人は、言われて交差させた腕の下で、こくこくと頭を振る。
「こ、殺さないって、そいつ言った」
「おう、殺すつもりはねえぞ。俺も、こいつもな」
 キッドはアイラックの肩を抱く。アイラックはやっと息をつき、手早く銃の始末をつけた。
 突きつけたはいいが、もともと引き金を引く気は毛頭ない。あの惨状を見た後では特に。
 下げた銃を腰に戻すと、やっと獣人はそろそろと腕を頭から離す。うかがうような上目遣いは変わらなかったが。
「こいつはアイラックだ。俺の昔からの腐れ縁」
「くされ、えん?」
 獣人は呆けたように繰り返した。人間のような肌をして、その輪郭を白銀の髪が取り巻いている。
「あー、腐れ縁ってのは」
「縁を切りたくても、なぜか切れずにいるってことだよ」
「……おまえ、それひどくね?」
「ひどくない」
 アイラックは言い切った。ぱんと、肩から手を叩いてどかせる。そのままキッドの鼻めがけて指を突きつけた。
「だいたいキッド、おまえは勝手に動きすぎるんだ。今回は良かったものの、まだ敵意のある…奴とか、ああいう阿呆がいたらどうするつもりだった?」
 キッドは指に気圧されて顔をそらせる。 「別に無かったんだからいいじゃん」
「いいじゃん、じゃねえ。だったらどうするつもりだったんだと、俺は訊いているんだ」
 えー、とキッドは視線を泳がす。
 ……こいつ本当に、本当に何も考えていなかったな、なあんにも。
「まったく」 アイラックは髪をかき上げる。 「これが腐れ縁ってやつだよ。愛想がつきても切れやしない」
 よく言うよ、とキッドは軽く舌打ちする。そのまま再びコックピットに笑いかけた。
「わかるだろ? こいつ、アイラックはこーゆーヤなヤツね。で、おまえは? 名前、何て言うんだ?」
「……ピリオ」
 今では獣人は腕をおろし、ぽかんとした顔でアイラック、というよりもキッドを見上げている。キッドはそうか、と笑った。 「ピリオ」 と呼びかける。
「だからさ? 安心して出てこいよ。おまえを殺そうなんてヤツはここにはいないから」
 けれど獣人はぎゅっと再び怯えたように腕を引っ込めた。丸めた背中にあるのは、あれは翼だろうか?
「さっき、あっちの方、たくさん銃声、聞こえた」
 ああ、とキッドはため息をつく。 「そうだな。してたな。でも、今はいねえ。俺達が追い払った」
「ほんとう? 本当に?」
「本当だ。ほら、耳を澄ませてみな、ピリオ。何も聞こえやしねえだろう?」
 ぴくり、と獣人は顔を上げた。背中で翼が軽く広がり、そして揺れた。
 しばらく考え込むようにうつむいて、そしてこくんと喉が鳴った。
「あっちから逃げてここ、息止めてた。ずっと、ずっと。そしたら銃、たくさんして、ニ、ニンゲン、みんなを殺し、殺して」
 ぼろり。
 例えるなら、そうとしか言いようがない。金色の瞳、黒い瞳孔。見る間にわき上がった涙がこぼれ落ちる。
 獣人が泣くのを初めて見た。そもそも獣人が泣くなんて、考えたこともなかった。
 同じことをキッドも考えたのだろう。思わず見やると、驚いたように眉を跳ね上げた。
「お、俺……じゃない……自分はぶた、部隊とはぐれて、それで」
 獣人が涙ながらにしゃくり上げているなんて、どんな光景だよ。
 口元まで出かかった言葉を、アイラックはとりあえず呑み込む。そんな事を言ったら、もっと泣きじゃくりそうだ。
「ああ、まあ、事情はいいよ」
 立ち直りが早かったのはキッドの方だ。こいつはいつも、子供の扱いだけは上手いのだ。
      子供?
「じゃあ、な? とりあえず泣きやめよ、ピリオ。で、出てこいよ、こっちに来い」
 なだめるキッドの声を聞きながら、その単語をアイラックは反芻する。
 キッドを見上げる顔立ちではなくて、そのすがるような目の色を理解する。
 どちらかといえば華奢な体つき。腕も細ければ、首も細い。コックピットの縁を掴んだ手を覆う、毛の白さ。
 コックピットを出る時、獣人は中を振り返った。痛そうに目を細める。
「ピリオ? どうした?」
 ううん、とまた子供じみた動作で獣人は首を振る。 「パイロット。……謝った」
 見れば座席の下、小さな人型の獣人が丸くなっていた。白い毛につく薄ピンク色の正体は、それだろう。
「俺、あっちから逃げて、この人を押したから。この人のこれ、ガンメンなのに」
 その言い方がまるで切なかったから。アイラックはたまらず二人に背を向けて、先にガンメンを駆け下りた。
「どうしたんだ?」
 おそらくじりじりして待っていただろうキタンが、ガンメンに向かって顎をしゃくる。
「獣人だよ。生きているのもいたということだ。ダヤッカは?」
「ジープを持ってくる。それよりキッドは? 無事か?」
「心配ない」
 言いながら、アイラックはガンメンを見上げた。獣人がキッドと並んで立っていた。
 思ったより背は低い。キッドの半分より少し高いくらいだろう。思ったより大きな翼が、ゆうらりと揺れている。
 キッドが先に下に降りるよう促す。けれど獣人は首を振った。
「なんだ、あの獣人は?」
 尻込みするようにたたまれた翼に、むしろキタンは呆れたような声を出す。
 キッドが手を差し出し、獣人もおずおずとその手を出した。
 不安定そうに、キッドに手を引かれてガンメンを降りてくる、白い獣人。
 ピリオ、か。
「……捕虜1号って所かな?」
 遠くから、砂を噛むジープの音が聞こえてきた。


                                      「カナリアは歌う」 終



「さようなら、と僕らは言った」 Chapter2-1 へ続く

テーマ : 二次創作 - ジャンル : 小説・文学

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